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記事詳細

2020/02/14 22:48

H1N1のパンデミックの気配が漂う中、今シーズンの米国でのインフルエンザワクチンの供給量が「1億7330万回分」に達し、過去40年で最大となる中でインフル患者数は過去最大規模に

2020年2月12日
人口3億2000万人の米国の半数をカバーするワクチンが提供されている中で

アメリカでの今シーズンの異常な季節性インフルエンザの蔓延については、以下の記事などで取りあげさせていただいています。

アメリカの季節性インフルエンザがさらに爆発的流行。米CDCは感染者数が最大で3100万人に達していると発表。死者は最大3万人に

2020年2月8日
アメリカCDCが発表した2020年2月1日までのインフルエンザに関しての状況
us-flu-cdc0201.png

(アメリカ疾病予防管理センター)の数値は、1月第3週までのデータからの推定値でしたが、昨日更新されました 2月1日の時点までのアメリカのインフルエンザの感染状況は冒頭のようになり、さらに深刻な流行となっているようです。

その数値は以下のようになっています。

今シーズンの米国のインフルエンザを巡る状況
[インフルエンザを発症した人] 2200万人 - 最大 3100万人
[インフルエンザで受診した人] 1000万人 - 最大 1500万人
[インフルエンザで入院した人] 21万人 - 最大 37万人
[インフルエンザで死亡した人] 1万2000人 - 最大 3万人


前回の 1月第3週までの CDC の発表は以下のようなものでした。

us-flu-csc03b.gif

最大推定値でいえば、今シーズンのアメリカのインフルエンザに関しての総計は、1月第3週から、

・インフルエンザの患者数が 2100万人 → 3100万人に増加
・インフルエンザで受診した人の数が 1000万人 → 1500万人に増加
・インフルエンザで入院した人の数が 25万人 → 37万人に増加
・インフルエンザで死亡した人の数が 2万人 → 3万人に増加


したということになっています。

インフルエンザの感染拡大状況も以下のように全土的になっていまして、オレンジ以上が警報レベルとなりますが、アイダホ州とネバダ州、アラスカ州以外はすべてが警報レベルとなっています。

2020年2月1日のアメリカのインフルエンザ警報レベルマップ
flu-map-0201.jpg

なお、今シーズンのアメリカの季節性インフルエンザの特徴は、若い人たちも重症化していることで、13歳未満の小児も、これまで 78人がインフルエンザで亡くなったと CDC は報じています。

また、CDC のデータを見ますと、インフルエンザ A とインフルエンザ B が、同時に流行していることがわかり、そして今シーズン全体としては、インフルエンザ B のほうがやや多くなっています。

2019年9月29日-2020年2月1日の米国のインフルエンザの分布
・インフルエンザA 40.7%
・インフルエンザB 59.3%


なお、インフルエンザで死亡した小児のうちの 52人が、インフルエンザBによるものでした。

インフルエンザで医療機関を訪れる人の数は、前週より増加しているとのことで、まだ大流行は終わっていないようです。
なぜ、アメリカでここまで季節性インフルエンザの流行が悪化しているのか、その理由は今ひとつわかりません。

現状では、CDC (アメリカ疾病管理予防センター)の推計値として今シーズンの患者数が最低 2200万人、最大で 3100万人としていますが、報道などでは、現在のアメリカのインフルエンザの感染状況が、少なくとも近年では「過去最大」となりそうなことが伝えられています。

インフル“過去10年で最悪”か アメリカ

テレビ朝日 2020/02/11
アメリカで、インフルエンザの感染者数が過去10年で最悪の規模になる恐れがある。CDC=米疾病対策センターによると、今シーズンの感染者数は、これまでに推定で2200万人、死者数は1万2000人に上っている。

専門家からは、子どもの死者数が例年より増える可能性も指摘されている。流行が深刻だった2017〜2018年の感染者数は、推定で4500万人だったが、今シーズンはこれを超えるとも予測されている。


その増加ぶりは、新型コロナウイルスを上回るような指数関数的な患者の増加を示します。

2020年第5週までの米国のインフルエンザ患者数の推移
us-flu-weekly2020.jpg

このようなこともあり、たまに CDC のウェブサイトを見るのですが、最近 CDC の季節性インフルエンザの特設ページに以下の記述があることに気づきました。

173.3 million doses of flu vaccine have been distributed.
(1億7330万回分のインフルエンザワクチンが配布されています)


何と、今シーズン、アメリカで配布されているインフルエンザワクチンの量は 1億7000万回分以上もあるのでした。
CDC には、1980年からの過去 40年間のワクチン配布の推移のグラフが出ていますが、それはもうものすごい増え方です。

vaccine-supply-us1980.jpg
1980年からだと、供給量は「 9倍」を超えています。

アメリカの人口そのものは、以下のように 1980年頃からそれほど増加していませんので(というか、この世界銀行のデータからは減少しているように見えます)、単純に計算すれば、40年前より 9倍近いアメリカの人たちにインフルエンザワクチンが提供されているということになりそうです。

us-population-003.jpg

そういうことでしたら、さぞかし、アメリカでのインフルエンザの患者数も大幅に減少し続けていると思われますが、実際のアメリカのインフルエンザ患者数の推移は、2018年までのデータは以下のような推移となっています。2015年頃からは一直線で悪化しています。

2018年のシーズンまでの米国のインフルエンザ感染の推移
flu-hospitalize-2018.jpg
2011年頃と 2018年頃を比べますと、もはや同じ疾患とも思えないほどの増加ぶりです。

そして今シーズンは、報道によれば、これらのデータをすべて超えていく患者数、そして死者数になる可能性があるということになっています。

以下の数字は、過去 10年のワクチン供給量の推移です。

米国のインフルエンザワクチンの供給量の推移

ソース:CDC
・2008-2009年 1億1090万回分
・2009-2010年 1億1400万回分
・2010-2011年 1億5510万回分
・2011-2012年 1億3200万回分
・2012-2013年 1億3490万回分
・2013-2014年 1億3450万回分
・2014-2015年 1億4780万回分
・2015-2016年 1億4640万回分
・2016-2017年 1億4590万回分
・2017-2018年 1億5530万回分
・2018-2019年 1億6910万回分
・今シーズン   1億7330万回分


それにしても、「なぜ CDC はこんなデータを開示したのだろう」と不思議に思いました。

というのも、これは、歴史上最高量のワクチンを配布したシーズンが、現代史上最もインフルエンザ患者数が多くなってしまっていることを示すものとしか見えないからです。

ちなみに、実際の摂取状況としては、以下は 2019年までのシーズンで、アメリカの 5歳以下の子どもたちのインフルエンザワクチンの摂取率ですが、近年やや下がっているとはいえ、95%ほどの子どもたちが接種を受けていることがわかります。

us-flu-shot2018.jpg

ですので、少なくとも、子どもたちや若年層は、かなりの率で接種していることになりそうです。

大人に関しては、過去 10年ほどは、おおむね 40%前後で推移しているようです。

ですので、アメリカの人口の半数以上の数値である 1億7330万回分のワクチン量は、おおむね消費されていると思われます。

まあしかし、インフルエンザワクチンの有効性について、それに対して問題提起をすることは「反逆的な人物だ」と今の世の中では捉えられて、場合によっては、逮捕・留置・死刑というようなことも考えられますので、そういうようなことを書く気はないです。

まあ、このブログはもう何を書いても反逆のレッテルを貼られるものかもしれないですし、最近はそのあたりはどうでもいいのですけどね。

それはともかく、単純に、予防医療的な側面から見て、専門的には、このアメリカのインフルエンザ患者の毎年の増加ぶりはどのような解釈になるのかは知りたいとは思います。

しかし、今回の本題はこちらではなく、「今、世界中で豚インフルエンザの発症が拡大している」ことなのです。

新型コロナウイルスの拡大の中で秘かに増加し続けている豚インフルエンザ

アメリカ大統領補佐官として、国土安全保障やテロ対策などでオバマ大統領の補佐を務めていたリサ・モナコさんという方は、2月7日に、「アメリカが国家安全策として最優先事項とすべきはパンデミック対策だ」と述べたことが報じられていまして、これは新型コロナウイルスを念頭に置いて語っているものですが、しかし、今の世界の状況を見ていますと、「もうひとつのパンデミックが進行しているかもしれない」と思わせる状況が出てきています。

「 H1N1 豚インフルエンザ」が、いろいろな国で感染拡大しているのです。

この豚インフルエンザは、2009年にパンデミックを起こしたことで知られます。

2009年の流行(パンデミック2009H1N1)- Wikipedia

2009年の春頃から2010年3月にかけて世界中でH1N1亜型による新型インフルエンザが流行した。豚の間で流行っていた豚インフルエンザのウイルスがヒトに感染するようになったことに起因するとされる。

メキシコで流行した後に全世界へ拡大しており、2009年6月12日には世界保健機関(WHO) が世界的流行病(パンデミック)と宣言し、警戒水準もフェーズ 6に引き上げられた。

当初のメキシコにおける流行では感染死亡率の高さから注目されたが、その後の分析によって、季節性インフルエンザ並みかそれ以下の致死率(0.045%)とされている。2010年1月までに全世界で 1万4千人以上の死者を出している。


パンデミックとはいえ、全流行期間での死亡者が 1万 4千人ということは、今のアメリカの季節性インフルエンザの死者数のほうがそれをはるかに上回っている可能性が高いということもあり、何が危険なパンデミックなのがどうかは WHO の定義だけでは掴めない部分があります。

この H1N1 豚インフルエンザが現在さまざまな国で発生しているのですが、複数の患者が確認されている国として、以下の国や地域があります。

・台湾
・インド
・ベトナム
・メキシコ
・イエメン
・ソロモン諸島
・イスラエル

イエメンでは、今シーズン、H1N1インフルエンザの患者数が過去2ヵ月で 1600人に達し、43人が亡くなったと伝えられています。

これは同国の H1N1 の発生数、死者数共に過去最大となっています。なお、イエメンは、内戦などの影響で、1400万人が飢餓状態にあるとされています。

また、台湾の報道では、台湾での 2月第1週の 1週間のインフルエンザによる重症者と死亡者数は「過去 5年で最大になった」と述べられていました。

致死率に関しては、さきほどの Wikipedia では、2009年の H1N1 のパンデミックでは、

致死率 0.045%

と書かれてありました。

1%で 100人に 1人、0.01%で 10000人に 1人、ということになると思われますので、2009年の H1N1 豚インフルエンザは、「約 1万人に 50人弱が死亡した」という毒性だったと考えられると思います。

これは大したものではないと思われるかもしれないですが、例えば、今のアメリカのように、2000万人とか 3000万人が感染するような状態になれば、どうなるかという話でもあります。

鳥インフルエンザも各地で発生しています。中国では、先週に続いて、今週も別の場所で新たな H5N6 鳥インフルエンザが検出されたと報じられています。

bird-flu0210.jpg

ベトナムでも、2月10日に H5N6 鳥インフルエンザが検出されたと新華社が報じています。

鳥インフルエンザが、鳥から鳥に感染しているだけなら(養鶏などの問題はあるとして)人の健康への脅威にはならないのでしょうけれど、最近の以下の記事でふれましたように、世界最大の抗生物質の消費国である中国の人たちは、その抗生物質の乱用で、体内の免疫のバランスが崩れている人たちが多いと思われます。

How certain bacteria protect us against flu
medicalnewstoday.com 2019/01/17

特定の細菌がインフルエンザから私たちを守るメカニズム

新しい研究により、インフルエンザに対抗できるプロバイオティクスに近づいた。鼻と喉の細菌を微妙に変えることで、インフルエンザに勝てるかもしれないのだ。

現在の科学では、「微生物叢」という言葉が使われる時は、ほとんどの場合、それは腸内細菌を指している。

しかし、細菌は私たちの身体のあらゆる場所において内側にも外側にも両方存在して、覆っており、「マイクロバイオーム」という用語は、人間にあるすべての微生物の集合をあらわすのだ。

現在、私たちの呼吸器系の細菌がますます注目されている。

科学者の中には、この呼吸器系の細菌叢がウイルスによる感染症から私たちを守ることができるかもしれないと確信している人たちがいる。

米ミシガン大学の科学者たちによる最近の研究は、病気に感染するリスクを減らすために、これらの細菌叢を操作する可能性を調査している。

論文の筆頭著者であるベッツィ・フォックスマン教授(Prof. Betsy Foxman)は以下のように述べる。

「微生物を、根絶すべきである敵と見なすのではなく、私たちは微生物と協力するという考えが好ましいと考えます」

フォックスマン教授は、特にインフルエンザウイルスに対する感受性において、微生物たちが果たす役割を理解することに関心がある。

インフルエンザに直面して

私たちは現在、インフルエンザの大きな流行に直面しており、インフルエンザウイルスに感染するリスクを減らす新しい方法を見つけることは重要なことだ。インフルエンザは、多くの人々にとっては重篤な症状にはならないが、しかし、赤ちゃんや高齢者、あるいは基礎疾患のあるなどリスクの高い集団の場合、インフルエンザは肺炎などの深刻な合併症を引き起こす可能性がある。

インフルエンザのリスクを減少させるもののひとつに、インフルエンザワクチンがあるが、これは流行するワクチン株によって、人により予防効果が得られない場合があり、また世界中すべての人が予防接種を容易に受けられるわけではない。

インフルエンザのリスクを減らすための費用対効果の高い簡単な方法を見出すことはは、公衆衛生上の差し迫った問題となっている。

インフルエンザウイルスは、主に上気道および下気道の上皮細胞を標的とするが、上気道および下気道は細菌(常在菌)の大群で覆われている。

これらの細菌コロニーの構造が、インフルエンザウイルスがその人に感染し、病気を発症させる能力に影響を与える可能性はあるのだろうか。

これまでの研究では、この気道および下気道のマイクロバイオーム(微生物叢)を操作することで、病気に対する感受性が変化することが示されている。

たとえば、ある研究では、マウスを抗生物質で治療すると、細気管支上皮の変性が増加し、インフルエンザ感染後の死亡リスクが高くなることがわかった。

(※ その研究 「共生細菌は、抗ウイルス免疫の活性化の閾値を較正する」)
ht●●tps://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22705104

また、フォックスマン教授による以前の研究では、インフルエンザウイルスに感染した人の鼻と喉の肺炎球菌と黄色ブドウ球菌のレベルが上昇していることが示されていた。

これらの研究からも、呼吸器に存在する微生物叢とインフルエンザウイルス感染との間に関係があることは明らかなのだ。
しかし、著者が書いているように、現在までのところは、鼻や喉のマイクロバイオームとインフルエンザのリスクとの関連は、ヒトの集団では実証されていない。

科学誌 PLOS ONE に掲載された論文でフォックスマン教授たちのチームは、このヒトの集団での実証の問題に対処した。
(※ PLOS ONE の論文 「呼吸器の微生物叢とインフルエンザウイルス感染に対する感受性」)
ht●●tps://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0207898

細菌はウイルスからの防御者だった

これを調査するために、科学者たちは、2012年から 2014年にかけて実施されたニカラグアの世帯伝播調査のデータを使用した。参加者は、インフルエンザが確認された個人の家族だ。チームは、13日間またはインフルエンザが発症するまでのいずれか早い方で、それぞれを追跡した。

この研究では、研究の開始時にインフルエンザが陰性であった 537人のデータを使用した。

研究者たちは、プログラムの開始時に、咽喉および鼻の細菌のサンプルを採取した。そして、 DNA シーケンスを使用して、存在する細菌の種類の写真を構築することに成功した。このデータを 5つのクラスターに分割した。

細菌群のタイプを 5つのグループに分け、喫煙、年齢、生活環境、インフルエンザワクチン接種など、他の変数を制御した。
フォックスマン教授はこのように言う。

「私たちは誰がどのクラスターを持っているか、そしてそれを持つ人がインフルエンザにかかったかどうかに違いがあるかどうかを調べました。その結果はとてもエキサイティングなものでした」

「この特定の細菌群集がある場合、インフルエンザにかかるリスクが低いことが見出されたのです。このような結果はそれまで示されていなかったことでしたので、大きなニュースだといえます」


これらの結果は、インフルエンザにかかりやすい人たちと、かかりにくい人たちがいる理由を説明するのに役立つかもしれない。

呼吸器系のプロバイオティクスが作られる可能性

プロバイオティクス(人体に良い影響を与える微生物、またはそれらを含む製品)の支持者たちは、腸内のいわゆる「善玉」細菌を促進することを主張している。

これらの主張の多くは、やや誇張されているか、誤解を招く可能性もあるが、マイクロバイオームが私たちの健康に大きな影響を与えていることは間違いない。

フォックスマン教授は以下のように述べている。
「誰かの喉や鼻の微生物叢を他の人に移植するすることが可能なのかどうか。喉や鼻の微生物叢の錠剤が存在すると私たちが人々に伝えられる時が来るのか。そこに興味があります」

現在の研究は、この方向への第一歩を踏み出した。

フォックスマン教授は「それは非常に長い道のりであり、私たちは、まだその最初の段階に至ったに過ぎません」と述べる。
しかし、フォックスマン教授ら科学者たちはこの流れで研究を続ける予定であり、その研究の可能性は膨大だ。

抗生物質耐性菌が世界に拡大している中、感染症に対しての、この種の科学的介入は、ある種の生命線を提供することになる可能性がある。

フォックスマン教授は、「私たちの現在の医学は、常に新しい抗生物質が必要になっていますが、微生物叢での防御のようなものが確立されれば、私たちはより長くウイルスからの感染に耐えることができる可能性があり、このような方法で介入することができれば、副作用はずっと少なくなるでしょう」と述べる。

研究者たちは、これらの予備調査結果が将来の研究の基礎を作り、革新的な新しい方向を提供することを目指している。
ここまでです。

身体のいかなる細菌(常在菌)も、私たちをウイルス感染から守ってくれているという可能性がとても高くなっています。先ほど「細菌だけを殺す作用がある石鹸」というものの使用について懸念を示したのも、ここに理由があります。

あるいは、子どもの頃から医療処置や抗生物質の投与を受け続けてきた、たとえば私のような、腸内細菌環境が悪い(あるいは悪かった)人の場合は、おそらくは、他の部分の微生物環境もあまりよくないのだとは思います。

それだけに、「これ以上は常在菌を損ないたくない」という気持ちはあります。もうずっと「殺菌しない生活」を続けているのはそのためでもあります。

この「殺菌しないことの重要性」を教えて下さった藤田紘一郎医師には、とても感謝しています。

とはいえ、こういうのは気持ちの問題も大きいでしょうから(石鹸で手を洗わないと気持ち悪いと感じる方はたくさんいると思います)、手を洗うとか石鹸を使うとかは個人の指向の問題でいいのだと思います。

ただ、手にしても体表にしても、鼻や喉や口内にしても、過度に殺菌することはあまりよくないことは、先ほどご紹介したフォックスマン教授の研究からも伺えるのではないかと思います。

これと直接関係のある話ではないですが、近年の細菌学では、「 CRISPR-Cas (クリスパー-キャス)システム」という、細菌が持つ免疫システムの研究が盛んで、これは、外来性の遺伝子に対して獲得免疫機構を担っている「防御システム」であることがわかってきています。

細菌とウイルスの関係というのは、研究が進めば進むほど、これまで言われていたような単純なものではないことがわかってきています。

それは本当に複雑で、生物学の基本的な知識のない私には理解もままならないものなのですが、しかし「面白い」とは思います。

ウイルスに対抗するシステムを、多くの細菌は持っている。

そして、私たちの体内にある常在菌もそれを持っている


過度な殺菌や抗生物質の多用は、人間の免疫系を弱めてしまう可能性が高いです。

そういう意味では、中国で爆発的に新型コロナウイルスが感染拡大している理由のひとつが、あるいは、中国でアフリカ豚コレラが著しく感染拡大している理由のひとつが、以下のような報道と関係している部分もあるのかなというようにも思います。

抗生物質の乱用が中国人の健康に危害をもたらす
spc.jst.go.jp 2011/10/19
「抗生物質を代表とする抗菌剤の乱用は、中国医療界における深刻な問題と化している。中国は世界で最も抗生物質の乱用が深刻な国と言える。」衛生部薬政司の姚建紅副司長は、抗生物質は中国人の健康に危害をもたらしていると指摘した。

中国の1人あたり抗生物質使用量、米国の10倍
また、小児科における抗生物質乱用も深刻だ。北京児童医院の1日あたり患者数は約1万人で、うち約3分の1の子供が点滴を打ち、点滴薬には抗生物質が含まれているという。2009年に北京、上海、広州、武漢、重慶の病院の5カ所の病院の小児科で調査を行ったところ、抗生物質の使用量は国外の小児科の 2- 8倍に達していた。


この記事は、2011年のものなのですが、その後も中国での抗生物質の使用量は、どんどんと増えていったようで、2016年の抗生物質使用の、アメリカとイギリスとの比較では、以下のようになっています。

赤は人に対しての使用、黒は動物に対しての使用を示しています。

華南師範大学による英米中3カ国の抗生物質使用量の比較
antibiotics-china-2016.jpg

こんなに激しく抗生物質を乱用している状況では、多くの人と、そして飼育されている動物でも、ウイルスに対しての基本的な免疫がかなり失われている場合が多いと思われます。

どこよりも鳥インフルエンザの人間への感染が多いのは中国ですし、今のコロナウイルスも、中国がどこよりも感染率も致死率も高いです。動物にしても、アフリカ豚コレラがどこの国より激しく蔓延しているのも中国です。

これらは中国での抗生物質の異常ともいえる乱用と無関係とは言えない気がします。

そして、おそらく、今後起き得る鳥、あるいは豚インフルエンザのパンデミックとか、新しい耐性菌の出現も中国からになると考えています。

実際にすでに「最強の抗生物質コリスチン」でも殺せない耐性細菌( MCR-1 という遺伝子を持つ)が出現していますが、それも中国で生まれたものでした。

最強の抗生物質でも殺せない細菌、中国で発見される 世界に広まるのか
THP 2015/12/04
コリスチンは、毒性の強い大腸菌と肺炎菌を殺すための「最後の砦」と言われる強力な抗生物質だ。ところが、このコリスチンに対して耐性を持つ細菌が発見された。

イギリスの医学雑誌「The Lancet Infectious Diseases(ランセット・感染症)」に11月19日に掲載されたレポートによれば、これは突然変異した細菌で「MCR-1」という遺伝子を持つ。初めに中国の養豚場で発見され、その後、生肉(豚)と人間からも発見された。

現在MCR-1は中国国内でしか発見されていないが、コリスチンの使い過ぎを止めなけれはどんどん広まるだろうと科学者たちは警告している。

「我々をこの問題を訴え続け、政府が動きを起こすよう働きかけなければいけません。さもなくば、増え続ける患者に対して『申し訳ありませんが、あなたの感染症を治療する薬はありません』と言わなければならなくなるでしょう」


Bacteria containing mcr-1 gene resistant to all known antibiotics found in Denmark
news.com.au 2015/11/07

すべての既知の抗生物質に耐性を持つ MCR-1 遺伝子を含む細菌がデンマークで発見される

治療に使われるすべての既知の抗生物質に耐性を持つ耐性菌は、ほんの数週間前に中国で発見されたが、今、それがデンマークで見つかった。さらに悪いことに、それは、2012年からそこにありつづけていた。

先週のデンマーク工科大学の発表によれば、研究者たちは、ヒトと食べ物から採取された大腸菌の細菌サンプルから、恐れていた「不死身の遺伝子」を発見した。

科学者たちは 2009年から撮影した 3000の異なる大腸菌サンプルの遺伝子データベースの見直しを行ってきた。

具体的には、彼らは突然変異した「 MCR-1 」という遺伝子を求めていた。この MCR-1 は、細菌に恐ろしいほどの耐性を与えることのできるもので、たとえば、抗生物質の最後の砦といわれているコリスチンにも耐性を持つのだ。

医学誌ランセットに掲載された研究の中のプレスへの声明によると、今年初めに、血液感染症に罹患した患者が、このスーパー耐性菌を持っていたことが明らかにされた。

食品から採取したサンプルのうち、2012年から 2014年の間に輸入したサンプルからも、MCR-1遺伝子を含む5つの細菌が発見された。

デンマークの研究者たちは、治療することが不可能なこのスーパー細菌たちが、今、着実にヨーロッパに根を下ろしていることを恐れている。

スーパー耐性菌が見つかった血液感染症の患者は、国外に出ていなかった。

さらに、スーパー耐性菌に汚染された輸入食品は、ドイツから輸入された家禽類だったのだ。

MCR-1 を含有する細菌は、先月初めに、中国の豚や人々の間で発見された。

この MCR-1 の脅威は、すべての既知の抗生物質に対する免疫を持っていることだけではない。これは、速く広がる可能性を持っている。

MCR-1 は、プラスミド(細胞内で複製され、分配される染色体以外のDNA分子)内に存在することが見出された、 DNA の小さな移動する束だ。そして、これは複製され、異なる細菌の間を転送する力を持つ。

このような鳥インフルエンザも、普通であるならば人に感染しないものであることが多いのですが、免疫バランスの崩壊により、中国でなら人に感染してしまうようなことはあり得ると考えています。

なお、現在のように感染症が流行するかもしれない状況の中では、どのような方でも抗生物質の使用は極力控えるべきだと思います。

この数年間、さまざな研究が、「抗生物質は免疫細胞を殺す」ことを示していて、たとえば、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究では、抗生物質は「真菌感染症と戦う腸内細胞を殺す」ために、抗生物質を服用すると、真菌感染にかかりやすくなることを突き止めました。

また、2019年の英フランシス・クリック研究所の研究では、「抗生物質の服用は、インフルエンザ感染をより危険にする」ことを明らかにしています。

過剰な抗生物質の服用は、さまざまな免疫を下げる可能性が高いですので、少なくとも、感染症の流行期には、命に関わるような場合を除いて、できるだけ多用しないほうがいいとは思います。

今回は、新型コロナウイルスの拡大の中で、同時に、アメリカや台湾の例に見るような過去にないような季節性インフルエンザや豚インフルエンザなどの拡大も同時に進行していることについて書かせていただきました。

ウイルスは気温が高いと人間の体の外部では長く生きられないために、どちらも気温が高くなる春までにはある程度は収まるのだと思いますけれど、それまでどうなりますかね。

最終更新:2020/02/14 22:48

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