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2019/09/12 19:40

海の異常は極限に : 大平洋の海に出現した「塊のような異常な高温海域」。そして世界中で起きているかもしれない「魚の大量死、可能性」

2019年9月5日のアメリカ海洋大気庁のニュースリリースより
pacific-blob-2019.jpg

海の異常は、世界中で、さまざまに現れていますが、過去数年間の中で「最も重大な海洋生物の大惨事」のひとつだった事象の数々の「原因」となった現象が、また出現しました。

冒頭のアメリカ海洋大気庁(NOAA)のニュースリリースを最初にご紹介させていただきます。

ここからです。

New Marine Heatwave Emerges off West Coast, Resembles "the Blob”
NOAA 2019/09/05

新たにアメリカ西海岸沖に出現した高温の海域は「塊」のようだ

研究者たちは、アメリカ西海岸沖に出現した新しい高温海域が、海洋生態系へどのように影響するのかについて監視している。

今から 4年-5年前、やはりアメリカ西海岸沖に「塊 (Blob)のような熱帯海域」が出現し、西海岸の海洋生態系を混乱させたことがある。

そして現在、またも異常に温かい海水の新たな広がりが、以前とほぼ同じエリアで、ほぼ同じサイズに急速に成長している。

この西海岸沖の暖かな高温海水域は、アラスカ南部からカリフォルニア州沖にまで大きく広がっている。今回の高温海水域は、北太平洋において、過去 40年間で 2番目に大きな面積の海洋熱波となっている。

この新しい熱帯海域は、以前起きたものの初期段階と様相が似ている。それは、2014年から 2015年にピークに達したもので、この時には、アメリカ西海岸沖の海水温度は、平均で華氏 7度近く上昇した。

新しい高温海水域は過去数ヶ月にわたって現れている。高温海水域は比較的新しい状態で、主に海洋の上層部に影響を与えているが、今後急速に破壊される可能性もある。

しかし、この高温海水域は緩和されるという予測がある一方で、すでに、数か月間継続している。

その中で重要な問題は、この新しい高温の海域が、今後、海洋生態系に影響を与えるほど長く続くかどうかになる。

生物学者たちは、この海域のサイズの巨大さから、すでに影響を与えている可能性を示唆する。

2014年から2015年の高温海域の出現の際には、サケのアメリカ本土への回遊が妨げられ、アメリカ西海岸では、過去最大の有害な藻の大発生が起きた。そのために、海では大量死が相次ぎ、何千頭もの若いアシカたちが海岸で座礁した。

今後、NOAA の科学者たちは、西海岸沖の環境変化を追跡し、生態系への影響を見極めたいと考えているが、生態系への影響が出ることは間違いがなく、問題は、この異常な海水域がどれほど強く、そして長く続くかということになってくる。

ここまでです。

場所については、冒頭の図だけですと、ややわかりにくいかと思いますので、少しご説明いたしますと、場所は、以下の赤いラインで囲んだあたりの海域です。

blob-us-001.jpg

その海域の海水温度が、下のような「あまりに異常な高温」となっているという現象があらわれているのです。赤ければ赤いほど通常より海水温度が高いことを示します。

blob-us-002.jpg

さて・・・このような現象が現在起きているのですが、上の記事の中に、

> この新しい熱帯海域は、2014年から 2015年にピークに達した現象と似ている

という記述があります。

その頃、この海域で何が起きていたかご記憶でしょうか。

当時、In Deep と地球の記録で、個別の事案について何度も取りあげさせていただきましたが、たとえば、2014年から 2016年に、このアメリカ大陸の西海岸からアラスカにかけて起きた「非常に大規模な大量死」は、一例だけでも、以下のようになっていたのです。

paciffic-dead-2015bc.jpg

これらについては、2016年の以下の記事でまとめています。

崩壊の最終局面にあるかもしれない太平洋の生態系

太平洋では、2015年より以前も多くの海での大量死が起きていまして、南はチリやペルーから、北はアラスカに至るまで、非常に多くの大量死事象をご紹介してきましたが、あまり範囲を広げてもわかりにくくなりますので、

・北米でのできごと

・2015年から2016年のできごと


ということで、少し振り返ってみます。

下の地図はそれらの中で、特に規模が大きく印象的なものを示したものです。

2015年から2016年に米国からアラスカで発生した大規模大量死事象
paciffic-dead-2015.gif

アメリカ西海岸のヒトデの大量死は、2014年の記事ですが、2015年も継続中としてことで、ここに入れてあります。大量死が始まってから、そろそろ2年経ちますので、アメリカ西海岸のヒトデは、種類によっては絶滅したものもあるのではないでしょうか。

他にも小さな大量死事象は数多くありますが、この地図に記したものは、「それまでにその地ではなかった種類と規模の大量死」というような分類でよろしいかと思います。

特に、2015年のアラスカでのウミガラスという海鳥の大量死は非常に大規模で、その範囲も下のような広さの海岸沿いに延々とウミガラスの死体が毎日のように打ち上げられていたようです。

2015年のアラスカのウミドリの大量死
alaska-map-1.gif

アメリカ合衆国魚類野生生物局のプレスリリースよりその様子
alaska-birds-deaths.jpg

この上の地図だけだと、この範囲がどのくらいのものかわかりづらい部分もあるかと思います。

日本列島の長さと比較すると、このアラスカのウミドリの大量死が途方もないものだったことがわかると思います。

日本の国土との比較
japan-alaska.gif

これらの大量死の原因のすべてではないにしても、大きく関係していると考えられているのが、「海水の高温化」です。

下はアメリカ海洋大気庁(NOAA)の最も新しいデータで、2016年9月の気温の「平均との差」ですが、ピンクや赤い部分は「平均より高い」場所で、色が濃くなればなるほど、平均より高いことを示しています。
temperature-sep-2016.gif

海域に関しては、ほとんどすべてが通常よりかなり高いということになっていて、本来なら今頃の時期は冷たい海流の中で生態系が保たれている北太平洋の微生物や魚類などが、海水温度の高温化により生きられなくなっている可能性があると思われます。

微生物から小型の海洋生物の生態系が崩壊すれば、大型の魚類や海洋哺乳類、そして鳥類に至るまで海の生態系はことごとく崩壊すると考えられます。

それだけに、今続けざまに起きているアラスカなどでの海鳥やクジラなどの「大型生物の大量死」といいうのは、

「海の生態系の崩壊の最終局面」

といえる可能性もあり、多くの生物学者たちなどが非常に懸念しています。

そして、今回の記事のタイトルに「死につつある太平洋」とつけたのも、その理由でありまして、「太平洋が死につつある」というのは比喩ではなく、かなり切実な現実だということになると思います。

最近の海に関するニュースでも、たとえば、沖縄のサンゴ礁が「ほぼ全滅」に直面していることが最近改めて伝えられています。

国内最大のサンゴ礁、半分以上が死滅 97%が白化
沖縄タイムス 2016/11/10

環境省那覇自然環境事務所は9日、石垣島と西表島の間にある国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」で9月~10月に実施した調査結果について、調査35地点のうち97%で白化現象が見られ、そのうち5割を超えるサンゴが死滅していると発表した。

石垣自然保護官事務所の担当者は「全体的に白化が進んだ状態で、短期間での回復は厳しい」と話した。


石西礁湖というのは下の位置にあるサンゴ礁で、この位置から周辺海域などの位置を想像してみましても、おそらくですが、東アジアから東南アジアにいたる広い範囲でサンゴの白化が進んでいる可能性はあると思われます。

sango-ishigaki.gif
白化はそのまま進行すれば死滅しますので、この海域のサンゴの 97%が白化しているという現状だと、これから先、海水温度の低下が起こらなければ、おそらく「全滅」ということになると思われます。

広大な海のデッドゾーン化は止まるのか
そして、日々のニュースで報じられる「漁獲」のニュースも、ひとつひとつは見逃しがちですが、それらを並べますと、「やはり太平洋には何か起きている」ということが浮かび上がるようなものである気もします。

2016年10月から11月の漁獲に関してのニュース

・スルメイカ不漁深刻 道南、道東 加工業者「商売にならぬ」
 北海道新聞 2016/10/31

> 函館小型イカ釣漁業部会長は「こんなに少ないのは初めて」と嘆く。

・秋サバ不漁に悲鳴 八戸の水産業者ら
 読売新聞 2016/10/31

> 不漁だった前年に比べても3分の1以下の状況で、「極めて異例の水揚げ量」(八戸市水産事務所)

・秋サケ漁不漁続く 海水温上昇、来年以降も好材料なし-胆振・日高
 苫小牧民報社 2016/11/09

> 「稚魚が減少した原因は分からない」

・マグロ不漁、解体ショー中止 青森・大間の祭り
 朝日新聞 2016/10/29

・サンマ・サケ、高値の秋 北海道不漁、影響県内にも
 信毎 web 2016/10/20


もはや太平洋の異変は明らかだといえそうで、あとは、これからこの状態がどれだけ進行・拡大していくのかということになりそうです。
とにかく、この頃のアメリカ西海岸からアラスカの海は、海洋生物の座礁と大量死に綾取られていたような時期でしたが、今、再び、その時の「原因」とされていたのと同じ現象が起きているのです。

今後、海洋生物の環境にどういう影響が出るかは、NOAA のニュースリリースの中にありますように、起きることを見ていくしかないのですが、基本的に、このアメリカ沖の太平洋は、「生態系的に、すでに弱っている」という感じがしまして、今回の「高温海水の塊」が長く持続すると、かなり厳しい影響が出る可能性がありそうです。

ただ、現実としては、海の生態系が弱っていたり、あるいは変化していたりするのは、世界中で同じともいえます。

日本周辺も、西日本を中心に、海洋生物がすめない「デッドゾーン」が非常に拡大していることが、2018年の科学誌サイエンスの調査結果でわかりました。

下の図の赤いドットの海域がデッドゾーンとなります。

2018年1月のサイエンスに掲載された論文より日本周辺のデッドゾーン
dead-zone-japan2019bc.jpg

最近の日々のニュースも、海に関してのものは多いです。

昨日は、三重県で、真珠の養殖に使うアコヤガイが「 209万個」にのぼる大量を起こしたことが報じられていました。

三重のアコヤガイ死209万個 県全体の2割以上
共同通信 2019/09/09

真珠の養殖に使うアコヤガイが産地で大量死している問題で、三重県は9日、県内で死んだアコヤガイが209万2千個に上るとの調査結果を発表した。

県によると、県内の6月時点のアコヤガイの総数は約1022万個と推計され、全体の2割以上が死んだことになる。調査の回収率は約48%で、被害はさらに広がっている可能性がある。

アコヤガイの大量死は、農林水産省の統計で2017年の養殖真珠の生産量が全国1位の愛媛県と同2位の長崎県でも判明している。同3位の三重県の生産量は4.1トン。


あと、海そのものの異変とはちがう話ですけれど、やはり昨日「変なニュース」を目にしました。水族館に運ばれたクロマグロの稚魚が大量死を起こしたというものです。

1カ月で3000匹から1匹に 水族館のクロマグロ稚魚
news.tv-asahi.co.jp 2019/09/09

青森市にある浅虫水族館のクロマグロの稚魚は運び込まれてから1カ月が経ち、ついに生き残ったのは1匹だけになりました。

浅虫水族館のクロマグロの稚魚は育てられた大分県を出発する時は3000匹いました。しかし、先月7日に水族館に移されてからは数日で激減し、水槽での展示が始まった先月11日には13匹になっていました。

そして、今月6日の昼間に稚魚が1匹になっているのを職員が確認しました。浅虫水族館によりますと、稚魚が繊細で水質の変化などに対応できなかったことや水槽の壁などにぶつかって傷を負ったことなどが稚魚が死んだ原因として考えられるということです。


それぞれ理由はあるだろうとしても、これまでではあまり考えることのできない事案ではあります。

なお、今回の「海水温度の変化の原因」ということについては、その理由は、全体として基本的にわかっていないものですが、ただ、このアメリカ西海岸沖という海域は、「海底から大量のメタンガスが噴出している」という場所が存在しているところでもあります。

以下は、2013年のアメリカの報道です。

サンタモニカの悪臭の原因は海底から噴出しているメタンが原因の可能性
KTLA 2013.03.04

ロサンゼルス当局は、サンタモニカに漂う悪臭の原因は、海からのメタンの大量放出によって引き起こされたと推定している。

サンタモニカの火災防護チームがサンビセンテ近くの沖で測定した結果、海中に大量のメタンを発見した。当局は、最近の水温の変化は、海面の下でメタンが放出されたことによってプランクトンや藻類の大量発生が引き起こされたものによるかもしれないと語った。

メタンガスは地殻プレートが移動したことによる地質現象によって噴出されている可能性も考えられるという。


ここに、

> 最近の水温の変化は、海面の下でメタンが放出されたことによって

とありますように、「大平洋の海底で異変が起きていることによって、海水温度が変化している」という可能性は十分にあると思われます。「地質の異常が海水温度の異常にも結びつく可能性がある」ということは、おそらく事実で、ここ数年の海水温度の異様な高さは、それも関係しているようには思います。

いずれにしましても、さまざまな生物の大量死の様相が出現している今の世の中で、魚たちの世界にもそれが近づいている気配が漂います。

この「魚の大量死」ということについては、いずれ、世界中の状況をご紹介したいと思いますが、さらに激しくなってきています。

最終更新:2019/09/12 19:40

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