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2019/02/25 21:51

イタリアを最大瞬間風速「時速200km」というスーパーハリケーン級の信じがたいレベルの暴風雨が襲う

2019年2月24日のイタリアの報道より
italy-storm-0224.jpg

イタリアで 2月23日、おそらく同国が経験したことのないような暴風が全土にわたり吹き荒れました。

突風で耐え折れた巨木
italy-wind-tree01.jpg

その日の、イタリアの暴風の状況は以下のようになっていまして、全体として、時速 100キロメートル以上の激しい風が吹き荒れていたようです。

2月23日のイタリア各地の瞬間最大風速
italy-wind-0223.jpg

しかし、他の報道によれば、場所により「時速 200キロメートル」の瞬間最大風速が記録されたことが報じられています。

この時速 200キロメートルという風がどの程度のものなのかは、暴風雨に関しての世界基準の「カテゴリー」と比較するとわかります。

これは、台風、ハリケーン、サイクロンその他を含む暴風雨に適用されます。

最大瞬間風速の強さの世界的な基準

カテゴリー1 時速 118 - 152 キロメートル
カテゴリー2 時速 153 - 176 キロメートル
カテゴリー3 時速 176 - 208 キロメートル
カテゴリー4 時速 209 - 248 キロメートル
カテゴリー5 時速 249キロメートル以上


現在の基準では、カテゴリー 5が最も強力な暴風雨となっていて、一般的に、このクラスは「スーパー台風」とか「スーパーハリケーン」というように呼ばれる破壊力の激しいものです。

そして、今回のイタリアで記録された最大瞬間風速 200キロメートルというのは、カテゴリー 4にも近いもので、普通は、ヨーロッパでは決して出現しないような暴風です。

暴風の後、ローマをはじめとするイタリアの各地で多くの観光地が閉鎖となっています。

突風で破壊された窓
italy-wind-windosa.jpg

飛ばされた大きな屋根
wind-roof-007.jpg

写真にありますように、各地で、倒木や屋根が飛ばされるなどが相次ぎ、5名の方が亡くなったと報じられています。

iw-car-005.jpg

iw-men-007.jpg

このイタリアの悪天候は、地中海で発生したものですが、昨年は、ギリシャが地中海で発生した珍しいハリケーンの被害を受けたことを以下の記事でご紹介させていただいたことがあります。

地中海で発生する珍しいタイプのハリケーン並の暴風雨「メディケーン」によりギリシャで壊滅的な洪水での大きな被害

2018年9月29日 地中海で発生した暴風雨を報じるギリシャの報道より
medicane-greece-0929.jpg

日本も台風の直撃の連続に見舞われていますが、他の国々でも暴風雨の直撃や被害が相次いでいます。

そのような中、ギリシャが、地中海で発生してヨーロッパに向かって進んでいくという珍しいタイプの暴風雨による豪雨や暴風、そして洪水により大きな被害を受けています。

洪水と高波で浸水したギリシャの街キャト
kiato-floods-0929.jpg

洪水の後のギリシャの町の様子
greece-aftre-floods0929.jpg

この暴風雨は、地中海で発生ものですが、報道などでは、サイクロンと呼んでいる場合もありましたが、実際には、

「通常ならほとんど発生しないタイプの暴風雨」

なのです。

そのようなわけで、実際には「カテゴリーとしての名前はない暴風雨」なのですが、冒頭のギリシャ CNN の報道のように「メディケーン」と呼ぶ報道が多くありました。

この「メディケーン」という言葉は、私も初めて聞いたのですが、その説明をアメリカの気象サイトから抜粋しますと、以下のようになります。

What is a 'medicane'?

「メディケーン」とは何か

現在、ギリシャ、そしてトルコ西部で、大雨、強風、沿岸での大規模な洪水が発生している。しかし、この暴風雨は、おそらく多くの人たちが聞いたことがないものだと思われる。

これは「メディケーン (medicane)」と呼ばれ、地中海地域に特有のものだ。

医学(medicine)と似た綴りだが、何の関係もない。この名前は 「地中海 (Mediterranean)」と 「ハリケーン (Hurricane)」の 2つの言葉の組み合わせだ。

公式の気象用語ではないが、この名前はこれらの台風やサイクロン、ハリケーン等との地域的な違いを分類する。


このようなものです。

かつては、地中海で発生した暴風雨がギリシャを壊滅的な被害に導くというようなことはほとんどなかったのですが、今は、このようなことが起きてしまうようになったのです。

この「メディケーン」は、現在も暴風雨として移動していて、10月始めにかけて以下のような進路を取るとされています。

2018年10月1日までのメディケーンの予想進路図
9-29-medicane.jpg

このような強力な暴風雨が地中海で発生する理由は、おそらく「地中海の海水温度がきわめて高いため」ではないかと考えられます。

2018年6月に、地中海の気温が異様に高いことを以下の記事で取りあげました。

ヨーロッパの地中海での海水温度が完全に異常な状態となっており「通常より5℃高い」海域も。原因は不明

2018年6月14日の地中海の海水表面温度の平年と差異
mediterranean-sea-temperature2018.jpg

2018年のはじめに、以下の記事において、イタリア西部のアドリア海の海水温度が「異常に高い」ということについてご紹介したことがあります。

アドリア海の海水温が異常な高騰。海底火山活動が活溌といわれるイタリア周辺の海で何が起きている?
アドリア海の位置と5月31日の海水温度の平年との差
adria-may-2018.jpg

イタリア半島の東部に「アドリア海」という海域があります。

少し大きな地図で示しますと、下の位置になります。

アドリア海
adriantic-sea-map.jpg

この海域が、現在「極めて高い」海水表面温度に見舞われていまして、冒頭にも示しましたが、その大部分が平年を 3℃以上も上回る場所に覆われているという、やや異常な状況となっています。

下がアドリア海の平年との海水温度の差を示したものです。

アドリア海の海水温度の平年との差
adriaric-sea-3.jpg

大気の気温なら、平年より 3℃高いくらいはどうということもないのですが、海の温度となると事情も違います。

たとえば、現在の「全世界の海水温度」の平年との差はどのくらいになっているかといいますと、下は日本の気象庁の 4月(入手できるもので最新)のデータですが、以下のようになっています。

最も海水温度が高い海域でも「平年より 1℃高い」程度が最大限となっていることがおわかりかと思います。平年より 2℃高いという場所さえありません。

2018-april-kaisuiondo.jpg

ところが、現在のアドリア海では、そのほぼ全域が「平年より 3℃、あるいはそれ以上高い」ということになっていまして、注目を集めています。原因はわかっていません。

このヨーロッパの周辺の最近の気温は、このように海水温度に影響を与えるような高温ではありませんでした。

そこで個人的に気になりましたのが、過去記事でご紹介していたことですが、

最近、イタリア半島の周辺で海底火山の活動が活溌化している

ということです。

下のふたつの記事は、イタリア周辺の海底火山に関してのものです。

ポンペイを壊滅させたイタリア・ベスビオ火山近くの海で「未知の海底火山が6つ」同時に発見される

2016年10月1日の英国エクスプレスの記事より
vesvio-unknown-volcanoes.png

ヨーロッパ最大の地球科学の研究機関である「イタリア国立地球物理学火山学研究所(INGV)」が、イタリアのベスビオ(ヴェスヴィオ)火山近くのナポリ湾の海底に、今まで知られていなかった海底火山が「6つ」発見されたと発表しました。

これは、火山学研究所が、ベスビオ山の噴火の状況に関しての研究として、二酸化炭素排出量を検査し続けていたのですが、その測定の中で、ベスビオ山から数キロの場所にあるあるナポリ湾という湾の海底に高さ 800メートルほどの6つの未知の火山を発見したというものでした。

新しく見つかった海底火山の位置
six-volcanic-structures-vesuvius-italy.gif

ベスビオ山とナポリ湾の場所
Vesuvio-map.gif

なぜ、イタリア国立地球物理学火山学研究所がベスビオ山の噴火の可能性についての研究を続けているかといいますと、現在のイタリアにとって、ベスビオ山の噴火は、自然災害として、大きな懸念だからです。

西暦 79年に、当時の古代都市ポンペイが、ベスビオ火山の噴火による火砕流によって完全に埋もれてしまったことは有名です。

62年2月5日、ポンペイを襲った激しい地震によりポンペイや他のカンパニア諸都市は大きな被害を受けた。町はすぐに以前より立派に再建されたが、その再建作業も完全には終わらない79年8月24日の午後1時頃にヴェスヴィオ火山が大噴火し、一昼夜に渡って火山灰が降り続けた。

翌25日(噴火から約12時間後)の噴火末期に火砕流が発生し、ポンペイ市は一瞬にして完全に地中に埋まった。降下火山灰はその後も続いた。

噴火直後に当時のローマ皇帝ティトゥスはポンペイに使者を出すが、市は壊滅したあとだった。市民の多くが火砕流発生前にローマなどに逃げたが、これら一連の災害により、地震の前には2万人程度いたポンペイ市民の内、何らかの理由で街に留まった者の中から逃げ遅れた者約2千人が犠牲になった。 ポンペイ Wikipedia


その後も、1631年12月にも大噴火を起こして、約 3000人が死亡するなど、過去に大きな噴火を繰り返しています。

そして、次の噴火の可能性について調査している中で、新しい海底火山が見つかったということのようです。

新たに見つかった海底火山の場所を図で示したものを載せましたが、航空写真で見ますと下のような感じになり、このナポリ湾という場所は、狭い範囲にベスビオ山を加えて7つの火山が存在する場所だということが今にしてわかったということになります。

undersea-volcano-napoli.jpg

イタリア沖で「海底からの謎の爆発・噴出現象」が確認される。未知の海底火山が活動し始めた可能性も
2017年3月31日イタリアの報道より
mysterious-sea-explosion.png

イタリアで、「原因不明の爆発現象が海で起きている」ことが現地メディアで報じられています。既知の海底火山がある場所ではないようで、専門家たちが現在、海底の調査を進めているようです。

確定した原因はわかっていませんが、イタリアの地質学専門家たちは「未知の海底火山の活動の可能性がある」としています。

下の動画は最初に現地の漁師の人が発見した時に撮影されたもので、それほど状況がよくわかるものではないですが、爆発・噴出と同時に、周囲の海域の色が変わっていたそうです。

爆発が起きているのは、イタリアのティレニア海にあるピアノーザ島という島の近くです。

ピアノーザ島の場所
pianosa-island-map.gif

イタリア国立地球物理学火山学研究所(INGV)の専門家たちが該当海域の水質や水中の状況を調査しましたが、海底ではメタン濃度が高くなっていることが確認されたそうです。

海底からメタンが吹き出している様子
methane-iatly-01.png

イタリア中部では、昨年来、数多くの地震に美馬分けていますが、その中で「イタリア半島を縦貫するアベニン山脈が 40センチ低くなった」ということもわかっています。

イタリアのエトナ山の噴火がさらに激しくなっていることが報じられ続けています。

短い期間の単位での変化はともかく、ある程度の期間の中で、これだけいろいろなことが起きているイタリアの地質的な変化がどのようなことに結びついていくのかは、地質学者たちの懸念でもあり、興味でもあるようです。

もちろん、地質的な変化の兆候はイタリアだけの話ではなく、日本も含めて、現在では全世界的なものとなっている感じがあります。

上の記事で、イタリア半島周辺で「未知の海底火山」か、その可能性があるものについて報道された場所は下の位置です。

italy-undersea-vol2017.jpg

これらは今回のアドリア海とは半島をはさんで逆の位置ですので、関係があるということではないのですが、イタリア周辺は最近、陸上の火山も含めて「地殻活動がとても活溌化している」と考えられています。

そういう中で、アドリア海で観測されている異常な海水温度の上昇も、あるいは、アドリア海の海底でも何か海底火山的なものの活動が起きていたりするのかもしれないとふと思った次第です。

原因はともかく、このように海の気温が上昇しますと、気候が荒れやすくなることは確実で、今後の南欧や東欧あたりの気象はさらに激しくなっていくのかもしれません。

その後も、アドリア海の海水表面温度は高いまま推移しているのですが、最近になって、海水温度が高いのは、このアドリア海という狭い範囲だけのことではなく、

「地中海全域が平年に比べて異常に高い海水温度を記録している」

ことが判明したのです。

冒頭の気温分布は、世界地図では以下の範囲となります。

world-map-tituekai.jpg

ふたつを合わせますと、その場所がわかりやすいかと思います。

6月14日に異常な海水温度を記録した範囲
mediterranean-sea-temperature0614.jpg

これは色の分布を見ますと、イタリアのアドリア海は、平年との気温の差が「 5℃以上」(薄い紫から白で示されています)となっている海域がかなりの面積を占めていて、これは・・・ちょっと異常ですね。

そして、地中海のイタリアからギリシャ、トルコにいたる海域がほぼすべて「平年より 3℃以上、海水温度が高い」ということが示されています。

前のアドリア海の記事の時にも書いたのですけれど、海水温度は大気のいわゆる気温とは違い、そんなに大きな変動があるものではないのです。

平年より 3℃高いというのも相当なもので、まして 5℃高いとなると、異常ということが言えるかと思われます。

どうして、このようなことになっているのかはわかりません。

それに、何よりも不思議なのは、実は世界的には、「今年は海水温度が比較的低い」のです。

この数年、非常に高い海水温度が続いていた世界の海ですが、今年はそうでもないのです。

たとえば、下は、アメリカ海洋大気庁(NOAA)の「海水温度の差異」のデータで、リリースされている中で最新の 6月18日のものです。

赤くなればなるほど平年より高い」
青くなればなるほど低い」
黄色が平年並み」

ということで見ていただくと、おわかりやすいかと思います。

2018年6月18日の世界の海水温度の平年との差異
sea-2018-0618.jpg

黄色の部分(平年並み)と、青い部分(平年より低い)が多く、赤い部分(平年より高い)は、かなり少ないことがおわかりかと思います。

実は、この海水温度が台風やハリケーンの行方も決定していくものとなるのですが、このように世界的に低い状態のままならば、今年は台風やハリケーンが「多くはならない」可能性がありますが、この先の変化もありますので、今はそのことにふれられないとしても、最近数年とは違う落ち着いた海水温度を示しているといえます。

ところが、その中で、地中海、そして北欧などのヨーロッパ周辺の海域は突出して高いのです。

eu-st-05.jpg

どうしてこんなことが起きているのかということについて興味はありますが、ここまで高いとなると、どうしても「海底火山など、メタンガスの噴出を含む地質の活動」を疑ってしまいます。

これはそのうち記事にしようと思いますが、実際現在は世界中でメタンガスの噴出がとても活発なのです。このブログで最近取りあげただけでも、オーストラリア、インド、アメリカ他、さまざまな場所でメタンガスが地底から噴出しています。

そして、NOAA の図を見ていますと、海もまた「異常に海水温度が低い場所」もあれば「異常に高い海域」もあることがわかります。気温だけではなく、海水温度も均衡を欠いた状態となっているということなのかもしれません。

2018年9月の終わり夏は終わりを迎えているのですが、実は「いまだに地中海の気温はものすごく高い」のです。

2018年9月25日の地中海の気温(赤い部分は25℃以上)
sea-t0925-mediterranean.jpg

今の地中海の海水温度は、軒並み 25℃以上となっています。

たとえば、台風やハリケーンが発生する条件のひとつに「海水温度が 26℃以上であること」がありますが、そこから考えても、今の地中海は暴風雨が発生しやすい状態となっていることがわかります。

場合によっては、今後もギリシャあるいは地中海に面したヨーロッパや北アフリカ諸国は、地中海で発生する暴風雨による影響を受け続ける可能性がありそうです。

このような地中海で発生する異常な気象は、ひとつは地中海の海水温度が関係しているのだろうとは思いますが、ここまでの暴風が発生するようになったということは、地中海の海水温度だけでは説明できない何かがヨーロッパの気象に働いているような感じがします。

この冬の寒波と大雪の激しさといい、ヨーロッパの異常な気象がさらに熾烈となっています。

最終更新:2019/02/25 21:51

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