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記事詳細

2018/10/22 22:38

アメリカの子どもの間で大流行しており、そして日本でも拡大する可能性のある「全身が麻痺したままとなる原因不明の急性疾患」。その背後にあるものは

原因不明の疾患のアメリカでの拡大を伝える報道
afp-us-2018ln.jpg

今から3年くらい前から気になっていたことについて、その状況が拡大、あるいは一般化してきているような気がしまして、少し書かせていただこうと思います。

世界の主要国に「定着」しはじめているかもしれない謎の疾患

2014年に、アメリカに「奇妙な病気」が出現しました。

それは主に子どもに起きる病気で、子どもたちが、「突然、腕や脚あるいは顔の筋肉に異常を起こし、歩くことや動くことができなくなってしまい、場合によっては、まぶたを上げることも、肺の筋肉も不全となることもある」という深刻なものでした。

原因はわからず、治療法もわからないまま、2015年になっても、またその翌年になっても、同じような症状の子どもたちの疾患が報告されました。

アメリカの小児医学界は、この病気を「急性弛緩性脊髄炎」と名づけました。

これは、英語の Acute Flaccid Myelitis から「 AFM 」と呼ばれていますが、この症状を呈する場合の全般を指して「急性弛緩性麻痺」とされ、やはり頭文字をとって「 AFP 」と呼ばれます。

難しそうな日本語ですが、

・急性

・弛緩性

・麻痺

と言葉を分ければ、わかりやすくなるかと思います。つまりは、

「突然、筋肉のコントロールができなくなり、身体の麻痺が起きる」

という病気です。

2014年の時点では、ウイルスなどによる一過性の病気かもしれないと考えられていましたが、今、この AFM の子どもたちの数と「範囲」が拡大しているのです。

アメリカの報道によれば、9月までに、コロラド州、ミネソタ州、イリノイ州、ワシントン州を含む全米 16州から 38の症例が報告されたことが アメリカ疾病管理予防センター ( CDC)から発表されています。

なお、2014年に、アメリカで AFM にかかった子どもたちの数は 120名にのぼりました。

そして、その 120名の子どもたちの「その後の状況」に関しては、中には回復した例もある一方で、 2016年のアメリカの報道の中に以下のような記述があり、かなり厳しいもののようです。

2016年の米国 UPI の報道より

疾病予防管理センターによれば、これまでのところ、アメリカ全国から 32の新たな AMF (急性弛緩性脊髄炎)の症例が報告されているという。2014年には 5ヵ月間に 34の州で 120人の子どもたちが AMF と診断された。

この 2014年に診断された子どもたち 120人のうち 3人が完全に回復した。


ここに、

> 120人のうち 3人が完全に回復した。

とある部分が深刻さを物語っています。発症から 2年も経った後に「 120名のうち完全に回復したのは、たった3人だけ」なのです。

この疾患に関しては、2016年の以下の記事で、初めて取りあげています。

現代の「謎の病気」は主に子どもたちに襲いかかっている アメリカで急増する「ポリオのような麻痺性の疾患」。そして子どものハンセン病や、正体のわからない様々な疾患

2016年9月21日の米国UPIより
polio-like-illness.jpg

子どもの病気の流行、まして、症状が重い上に「得体のしれない病気の流行」というものが出現してくるのは、親の立場としてはイヤなものですし、親とかの立場は関係なくとも、社会的に最も大事な存在といえる子どもたちに「致命的な影響を与える」ような病気の流行はどう考えても暗澹とした気分になりやすいです。

今、アメリカで、冒頭のような「ポリオ」のような病気、つまり「手や足に重大な麻痺が残る」というような病気が「子どもたちだけに」流行し始めています。

そして、その原因は「不明」、対処法も「不明」という中、患者の数だけが増え続けているのです。

新しく出現した病気はまさにポリオ

「ポリオ」という病気は、今では日本を始め、世界的に減少している疾患ですが、感染した場合、1000〜2000人に 1人くらいが、手や足などに「麻痺」が残ることがあるという深刻なものです。

1000人に 1人の重大な後遺症というと大したことがない率に思われるかもしれないですが、風邪が流行した際には、地区の中で 1000人や 2000人の風邪にかかる人たちなどすぐ出るものですが、そのように流行する病気で「1000人に 1人程度の重大な後遺症が残る」という病気は深刻だと思います。

このポリオは幸い、ワクチン、あるいは他の理由などで、今は世界でもほとんど見られないものとなりました。2015年のポリオの野生種の感染は、Wikipedia によれば、パキスタンで 52例、アフガニスタンで 19例となっていて、他はありません。

しかし、何の病気が根絶されたとしても、同じようなものがまた出てくるのが現在の地球でもあります。

以前、

・開き続けるパンドラの箱:アメリカ国立感染症研究所の感染症マップが示す、この30年間が「異常な病気の出現の時代」であったこと。そして、人類とウイルスの「歴史」が同一に見えること

その時にその時に報道などであげられる「新しく出現した病気や症状」などについて書いていたものでしたが、もう少し長いスパン、たとえば、この数十年間などでの「新たな感染症の増減」などについての具体的な状況を書いたことはありませんでした。

最近、ジカウイルスの拡大に伴い、アメリカなどでは感染症に関しての報道がとても多いのですが、それと関連して、ワシントンポストに、

「ジカウイルスだけではなく、感染症そのものが、この 30年間ほどで爆発的に増えている」

ことが指摘していて、そこにあったアメリカ国立衛生研究所の「全世界で新しく出現、あるいはかつて流行していた感染症が再び流行した」ことを示す「1984年」と「それ以降 2015年まで」を比較した感染症マップが掲載されていて、それを見て驚きました。

下がそのアメリカ国立衛生研究所の「感染症マップ」です。

1984年の感染症マップ
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1984年の時点では、世界の公衆衛生の最大の懸念は・・・というか、最大の懸念も何も、この時には「新たな感染症はエイズだけ」だったのです。

それが 2015年までに感染症マップは下のようになりました。

1984年以降の感染症マップ
global-examples-2015.gif

もう「ワッ」とばかりに、新たな感染症が増えたことがわかります。

地図の色の内訳の詳しくは後で記しますが、地図のうち「赤」はこの三十数年で新しく出現した感染症(新型インフルエンザやSARS、O157などを含みます)、「青」は再度流行した感染症(コレラ、ペスト、黄熱病など)となります。

「なんとなく新しい病気が増えているのではないだろうか」という感覚は、誰の中にもあったと思いますが、病気は本当に増えていたのです。

しかも、上の地図の病気のほとんどが、

「予防法も治療法もなく、対症療法しかない」

ものばかりです。

このマップが掲載されていたワシントンポストの記事は、それほど長いものではないですので、先にご紹介したいと思います。

タイトルは「ジカウイルスを超えて」、あるいは「ジカウイルスの向こうに」というような意味のものでした。

Beyond Zika: The terrifying map of things that keep NIH’s infectious diseases director up at night
Washington Post 2016/02/12

ジカの向こうに:恐ろしい感染症マップがアメリカ国立衛生研究所(NIH)の代表者に努力を続けさせている
感染症の専門家たちにとって、その仕事の中で最も恐ろしい側面のひとつが、感染症の新しい出現を予測することができないということだ。

アンソニー・フォーチ( Anthony Fauci )氏が、1984年に初めてアメリカ国立衛生研究所の代表となり仕事を始めた時には、感染症に対しての人々のすべての懸念は、その頃出現した1つの疾病に集中していた。

それは、HIV / エイズだった。

その時には、エイズウイルスがどのように拡散し、どのように人から人へと感染していき、そして、最終的にどのように感染した人たちを死にいたらしめるのかを誰もまだ正確には知らなかった。

下は、その 1984年に、フォーチ氏がアメリカ議会と協議した際に、エイズがいかに人類への脅威となり得るかを示すために使用したスライドの地図のコピーだ。(訳者注:さきほど掲載したものですが、わかりやすさのため、サイズを小さくして再度載せます)

global-examples-1984.gif

それから34年が経ち、その間に、地図は「進化」している。

フォーチ氏はインタビューで、氏が今でもその時と同じスライドを表示させていることを語ったが、同時に、

「その後は、年に1つ、ないしは2つの新しい感染症疾患が地図に追加されていくようになったのです」

と述べた。

この2年間( 2014年から 2015年)は特に忙しかったという。

「(アメリカの)ディズニーランドで流行した麻疹や、薬剤耐性結核、それに MERSや、カリブ海でのチクングニヤ熱などがありました。そして、今、私たちアメリカ国立衛生研究所はジカウイルスと対峙しています」と、フォーチ氏は言う。

「今では、常に新しく出現した感染症と、再び流行を始めた感染症ずあり、それらとの戦いがコンスタントに存在します」

彼らがエイズと対峙した 1984年から三十数年後の今、フォーチ氏がアメリカ議会に示した地図は以下のようになった。

global-examples-2015.gif

ここまでです。

なんというか、これはもう・・・理屈の問題ではなさそうで、今の地球は何らかの大きな病気のサイクルに突入していると考えて間違いないと思われます。

この尋常とは言えない感じもある増え方は、もはや現代医学での公衆衛生的な観念の側面からだけでは説明がつかないかもしれません。

たとえば、上の地図で「最も多くマークがついている(新たな感染症が出現している)国のひとつが、アメリカ合衆国」(後述しますが、起源ではないとは思います。最初に患者が確認された場所という意味です)であることも、公衆衛生の側面と新しい病気の出現がリンクしていないことを示しているように思います。

それほど公衆衛生に大きな問題が満ちあふれているとは考えにくいアメリカ合衆国が、この約 30年間で、世界で最も感染症が新しく出現している(確認されている)というのは、説明が難しそうですが、その一方で、具体的な意味はともかく、「なんとなく納得できなくもない」という面もないではないです。

ちなみに、感染症マップの英文字は小さくて、読みづらいと思いますので、ひとつひとつ調べてみますと、下のようになっていました。

この約30年間で新たに出現した感染症
サイクロスポーラ( Cyclosporiasis / 原虫による感染症)
ハンタウイルス肺症候群( Hantavirus pulmonary syndrome )
腸管出血性大腸菌O104 ( E.coli O104 H4 )
腸管出血性大腸菌O157 ( E.coli O157 H4 )
C型肝炎ウイルス( Hepatits C )
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病( vC JD )
ライム病( Lyme disease )
ラッサ熱( Lassa fever )
重症急性呼吸器症候群( SARS )
中東呼吸器症候群( MERS )
重症熱性血小板減少症候群ウイルス( SFTSV bunya virus )
変異型インフルエンザA型 H3N2v
インフルエンザA 2009 H1N1
鳥インフルエンザA H7N9
鳥インフルエンザA H5N1亜型
ニパウイルス感染症( Nipah virus )
ヘンドラウイルス( Hendra virus )
エンテロウイルス( Entero virus 71 )


かつて流行していた再び流行が発生した感染症
ペスト
コレラ
エボラ出血熱
マールブルグ出血熱
黄熱病
サル痘( Human monkeypox )
デング熱
リフトバレー熱
耐性菌マラリア
など


というような感じになっていますが、見た限り、赤マークのほうの「この 30年間で新たに出現した感染症」のほうに関しては、「特化した治療法が存在しない」ものだと思います。

つまり、インフルエンザも SARS や MERS も O157 や、ライム病などにしても、 症状をおさめる対症療法しかないはずです。

そして、具体的な予防法もないです。

「再流行」のほうは、エボラ熱や、症状がエボラと似たマールブルグ熱なども対症療法しかないですが、一方で、ペストやコレラなどには抗生物質がよく効くため、現在では死亡率は低いです。

・・・ですが、逆にいうと、これらの病気は「抗生物質が最後の砦」ともいえます。

耐性菌がもたらすかもしれない「何らかの未来」

ついに、すべての抗生物質に打ち勝つスーパーバクテリアが登場したことなどを思い出します。

2015年12月7日の報道より
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抗生物質に対しての耐性菌が次々と出現している中でも、コリスチンという抗生物質だけは、今まで「大丈夫」だったのですが、それにも耐性を持つ、「不死身の遺伝子」と科学者たちが呼ぶ MCR-1 という遺伝子を含むバクテリアがデンマークで見つかったのでした。

この遺伝子を含むバクテリアは、それより前の昨年 11月に中国で見つかっていたのですが、デンマークで見つかったことにより、全世界的に広がっている可能性が示唆されています。

こういうものが蔓延しだすと、まさに「すべての抗生物質が効かない」という世界が出現するのかもしれないのですね。

そういうところから考えてみましても、ペストやコレラといったような「抗生物質が最後の砦」の病気の再流行にしても、もはや「抗生物質がよく効くから大丈夫」という話ではなくなる可能性もあります。ちなみに、ペストはアメリカやマダガスカルなどで結構な数で患者が出ていて、おそらくですが、治療には大量の抗生物質が使われると思いますので、抗生物質に耐性を持つペストやコレラが出現するのも、そう先の話ではないのかもしれません。最近のペストの流行については、下の記事などをご参照下されば幸いです。

マダガスカルでペストの流行により63名が死亡2016年01月09日
Bubonic-plague-Madagascar.gif

アメリカで今年、ペストに感染する人が異常に増加中2015年08月26日
plague-usa-2015.gif

ちなみに、この「耐性菌」と関連した話ですと、少し古い話ですので、現在は数値が変わっていると思いますが、2010年に WHO は、

「中国での結核菌保菌者の数は 5億5千万人」

として、また、当時の記事には、以下のように記されていました。

中国では 2009年に肺結核が原因で死亡したと報告された人が 3783人、感染者の報告は 107万6938人だった。抗生物質が効かない耐性菌も多く、中国日報によると、流行が爆発すれば、恐るべき事態になるという。

中国工程院院士で、呼吸器感染症の権威とされる鐘南山氏によると、体内で結核菌の活動が活性化している人は中国全国で 450万人、保菌者は 5.5億人との結論が出された。人口の約半数が結核菌を持っており、一生のうちに発病する確率は 10%と考えられる。

一般的な治療法は、抗生物質 4種を同時に使うことで、連続して 6-8カ月使いつづければ、結核菌を完全に消滅させることができる。しかし最近では、抗生物質に耐性を持つ結核菌が増えている。


これからの病気に関しては、「未知の領域」というものも含めまして、いろいろな懸念の種のようなものはすでにありますが、しかし、何はともあれ、先ほどの地図でわかることと、医学的な事実として、

・この30年で新しい感染症が異常に増えている

・抗生物質が効かない細菌が増えている

・ウイルスについては治療薬はほとんどない

という現実があります。

現在流行しているジカウイルスは、場合によっては、「人類の健全な生殖と再生産の阻止」につながっていくものでもあり、北半球は今のところはまだ多くが冬ですので、今は心配はないでしょうが、しかし、北半球の多くの地域に、春が来て、そして夏が来て、蚊の活動が活発になる頃にジカウイルスが収まっているのかどうかは誰にもわからないです。

その中で、リオのカーニバルは大盛況で終わりまして、そのリオでのオリンピックがあったりもしていて、病気が広がる下地は十分にできあがっています。

こういう様々を見ますと、何となくですが、この 30年間の「病気の増大」のクライマックスが近づいているような気配も感じないではないです。

という記事で、この地球の過去 30年は、それまでの歴史になかったような「新しい病気の出現の時代」であることを、アメリカ国立衛生研究所の資料をもとに記したことがありました。

new-illness-2015.gif

今回取り上げる病気も、医療機関は完全にお手上げとなっていて、治療法もわかっていません。

最近、そういうアメリカの「手足の麻痺を伴う病気の流行」についての記事を目にしたのですけれど、最初に読んだのはワシントンポストの記事で、その冒頭にある男の子の「症状の出現」の描写にややショックを受けまして、そのワシントンポストの記事の冒頭部分を抜粋翻訳します。

9月21日のワシントンポストの記事より
A mysterious polio-like illness that paralyzes people may be surging this year

7月29日の夕食前、バージニア州の3歳の男の子カーター・ロバーツは、その健康にはまったく問題ないように見えた。

その夜、彼は嘔吐した。

翌日、彼が目覚めた時に 37.2℃の微熱があり、母親のロビン・ロバーツは、子どもは風邪を引いたのだと思った。

その翌朝、彼女は、子どもが寝室の床に倒れているのを発見した。

カーターは、「ママ、ぼくを助けて、ぼくを助けて」と言う。

母親が彼を抱き上げた時、彼はかろうじて立つことができる状態で、その首は後ろに反ったままだった。

最も母親が心配に思ったことは、カーターは、右腕を自分で動かすことができなくなっていることだった。

病院に運ばれたカーターは、右腕を使えなくなった数日以内に、足や他の筋肉のコントロールを失った。

今、彼は、つま先を小刻みに動かすことと、顔を左側に動かすこと以外はできない。

彼は病院で急性弛緩性脊髄炎と呼ばれるポリオと似た謎の疾患と診断された。

同じような症例が現在のアメリカで急増している。


子どもに微熱が出て、軽い風邪だと思っていたら、翌日に「体が麻痺して動けなくなっている」ということのようで、どうもこう、何とも言えない怖さというのか、そういうものがあります。

現在のアメリカで、この病気にかかる子どもが増えていて、それは下の表のように、現在かなりの上昇を描いているのです。

imrs-amf-2016.png

3歳あたりの子どもにとって、微熱、あるいは高熱は珍しいことではないわけで、子どもという存在自体が、空気中のさまざまな細菌やウイルスに対しての免疫をつけていく時期ですのが、風邪などを含めて、多くの病気にかかり熱を出していくことは必要なことだとも言えます。

しかし、こんな深刻な後遺症を伴うものだと、その考え方でいいというわけにもいかない感じもします。

何よりも、最も大きな問題は、治療法がわかっていないだけでなく、「何が原因となっているかもわかっていない」ということです。

原因がわからないということは、予防法がないわけで、どんな症状に気をつけるということもわからない。微熱が症状だとしても、微熱だけですべての子どもが病院に殺到しては、医療機関がパンクします。

何もわかっていないのです。

なので、さきほどのワシントンポストの記事にあるように、病院に運ばれたからといって、症状が改善するわけでもない。

ただ病院にいるという以外のなにものでもない。

あと、わりとショッキングな事実として、今回ご紹介する冒頭の UPI の記事によれば、2014年から始まっているこの疾病の流行の中で、 2014年に診断された子どもの場合、

「 120人のうち、完全に回復したのは 3人だけ」

というデータが示されています。他の大多数は、程度の差はあるだろうにしても、何らかの麻痺を残してしまっているという可能性が高いのです。

2014年の時点で 100人以上がこの麻痺を伴う謎の疾患にかかったことが報じられていましたが、今年は、さらに増えていく可能性もある上昇率となっています。

2015年1月28日のUSAトゥディより
polio-2014b.jpg

そして、アメリカでは、今年になって、何度も「謎の病気」や、あるいは、小学生のハンセン病など、症状的に深刻な可能性のあるものの報道が多くなっています。

2016年9月23日のインターナショナル・ビジネスタイムズより
Leprosy-Case-2016.jpg

2016年9月15日の米国報道より
alanama-sickens.jpg

最近は、妊娠した女性に関してのジカ熱などもそうですが、その影響が「不可逆」的な病気が多いような気がします。

元の状態には戻らないというか、その影響が一生に及ぶというような意味です。

今、アメリカで流行の兆しを見せている今回取り上げましたポリオのような病気もそのようなものであるようにも見えます。

いったい、この世界は子どもたちをどうしたいというのでしょうかね。

冒頭の米国 UPI の記事をご紹介します。

Cases of rare polio-like illness up sharply in 2016
UPI 2016/09/21

ポリオと似た珍しい疾患が2016年に急増している

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の職員たちは、急性弛緩性脊髄炎 / AFM の症例が突然の増加を示しているように見えることに懸念をあらわしている。

急性弛緩性脊髄炎の症例の急激な上昇は、最初は 2014年にアメリカの子どもたちのあいだにポリオのような症状の疾患が数多く見られたことに始まる。

これらの疾患に大流行の可能性があることに対して、医師たちは、この疾患に対しての理解がほとんどないことに懸念を抱く。

疾病予防管理センターによれば、これまでのところ、アメリカ全国から 32の新たな AMF (急性弛緩性脊髄炎)の症例が報告されているという。2014年には 5ヵ月間に 34の州から 120人の子どもたちが AMF と診断された。

それらの症例では AFMは、神経的症状が示される前に、発熱や呼吸器疾患として始まるように見え、そして、次第に手足の動きの麻痺につながっていく。

ほぼすべての患者が脊髄灰白質の炎症を示し、85%の子どもたちの症状は少し改善を示したように見える。 2014年に診断された子どもたち 120人のうちでは 3人が完全に回復した。

疾病予防管理センターは、2014年のデータと照らして、今年 1月以来のAFM の症例の上昇の原因を特定しようとしている。

アメリカ国立神経疾患・脳卒中研究所 (NINDS)のアヴィンドラ・ナス博士(Dr. Avindra Nath)は、ワシントンポスト紙に以下のように語る。

「このような私たちの考えを人騒がせだと怪訝に思う方々もいらっしゃるかもしれませんが、しかし、私たち医学者たちが懸念する理由は存在するのです。私たちは、これらの症例に対するさらなる情報を必要としています」

疾病予防管理センターは、2014年8月から 10月に AFM の疾患の症例の増加を受け始めたという。

AFM の具体的な原因は発見されていないが、これらの症例はウイルスによって引き起こされる疾患と似ている。

2014年の AFM の流行は、エンテロウイルス D-68 の全国的な流行と同時に発生した。そして、研究において AFM と D-68 に関係があることがわかった。

しかし、このウイルスのことはよく知られておらず、また、 D-68 に感染したすべての子どもが AFM を経験するわけではない。

コロラド大学とデンバー小児病院の神経学者であるテリー・シュライナー博士(Dr. Teri Schreiner)は、「私たちは、明らかにアメリカの全国の同僚たちから症例を聞いているのです」と言う。

「 2014年に起きたものと同様の速度で広がっているように見えており、これは気になる傾向です」

と、博士は付け加えた。

この中に、2016年9月21日の米ワシントンポストの「子どもに麻痺をもたらすポリオのような不可解な疾患の症例が急激に増えている」という記事を抜粋したものを掲載していますが、以下は、その記事の冒頭の部分です。

徐々にではなく、以下のように「ある日突然、症状が始まる」のです。

私はこれを読んだ時に、正直かなりのコワさを感じました。

この 2016年の時点では、

・原因がわからない

・予防法も治療法もない


ということになっていましたが、2018年の今もそれは同じです。

対症療法以外の治療法は一切なく、対症療法といっても、完全に筋肉の機能を失ってしまっているので、短期間ではリハビリなどに至るのは難しいですし、できる対症療法というのは、肺の機能を補助するための人工呼吸器などの措置のようです。

薬物などの治療も基本的に今のところ大きな効果はないと思われます。後でご紹介しますが、この疾患について、日本の厚生労働省が今年発行した文書に以下のようにあります。

厚生労働省「急性弛緩性麻痺の手引き」より

・急性弛緩性脊髄炎(AFM)に対して、今のところ著効する治療はなく、対症療法、支持療法 を中心に行う。


このように書いてあるのですが、その下にはアメリカでの治療例として以下のように書かれています。

急性弛緩性脊髄炎の治療として、静注免疫グロブリン投与、血漿交換、静注ステロイド、抗ウイルス薬の投与が行われる。

日本の報告では、免疫性中枢性・末梢性神経疾患で用いられるメチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法と経静脈的免疫グロブリン大量療法がそれぞれ7~8割の症例で行われていた


というように、それぞれがどんな治療効果があるのかはわからないですが、静注免疫グロブリン投与、血漿交換、静注ステロイド、抗ウイルス薬の投与、というようなことなどが行われるようです。

ここで先ほどの 2016年(最初のアメリカでのこの疾患の集団発生から 2年後)の報道の下のくだりを思い起こしてほしいのです。

> 120人のうち 3人が完全に回復した。

このあたりから見ますと、今のところ、劇的な治療の効果は出ていないと解釈しても構わないと思われます。

もちろん、「ある程度改善した」という例などを含めて、少しよくなった子どもたちは数多くいるでしょうけれど、ただ、厚生労働省の資料には、6ヶ月後の状態として、

運動麻痺は改善するものの、最終的に75~90%の患者で様々な程度の筋力低下が残存する。

と記されています。

現在も原因も治療法もわかっていない中で、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、以下のような印刷物を配布し、子どもに症状が現れた場合は、すみやかに医療機関に相談することを勧めています。

CDCが配布しているAFMの症状

symptoms-amf-cdc02.jpg

ここに書かれている症状は、おおむね、以下のようになります。

急性弛緩性麻痺の代表的な症状(これらが突然起きる)

・眼球を動かすのが難しくなる

・まぶたが落ちてくる

・顔の皮膚や筋肉が垂れてくる

・唾を飲み込むのが難しくなる

・突然、腕や脚の筋肉が弱くなる


これについては、先ほどの過去記事にあります 3歳の男の子の例も同じような感じです。

日本でも実は100人以上の症例が報告されていた

実は、今回このアメリカでのことを取りあげたのは、「これがアメリカだけの病気ではない」状況となっているためです。

簡単にいえば、

「日本の医療界でもやや緊張体制がとられている」

ようなのです。

たとえば今年 5月には、日本小児科学会はこの病気を「全数届出」としました。

全数届出というのは、その疾患を診察した医師は、その数すべてを管轄の保健所に届け出なければならないというものです。

以下の報道にそのことが書かれてあります。

15歳未満の急性弛緩性麻痺が全数届出に
m3.com 2018/05/24

日本小児科学会はこのほど、15歳未満の「急性弛緩性麻痺(AFP)」が2018年5月1日から全数届出疾患になったことを公式サイトで周知した。

2015年秋の急性弛緩性脊髄炎(AFM)の大流行後、同様の流行が発生した場合に備え、同学会予防接種・感染症対策委員会がAFPサーベイランスの準備を進めていたという。

今回、5類感染症となったことで、管轄の保健所に7日以内に届け出ることが義務付けされた。


症例が発生する可能性がないものを全数届出に指定するということもないでしょうし、ある程度の予測のようなものはあるのかもしれません。

先ほど引用させていただきましたが、今年 4月には、厚生労働省がこの急性弛緩性麻痺に対しての「手引き」を発行しています。

2018年4月に発行された急性弛緩性麻痺の手引き書の表紙

kousei-afp-manual02.jpg
・厚生労働省 / 国立感染症研究所https:●//www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/AFP/AFP-guide.pdf

この書類を読むまで知らなかったのですが、実は、日本でもかなりの症例が報告されているようなのです。

この厚生労働省の書類の「はじめに」には以下のようにあります。

2014年に北米で急性弛緩性脊髄炎 (AFM)症例が多発したのに引き続き、翌 2015年秋、日本でも急性弛緩性麻痺(AFP)症状を認める症例が多発しました。

当時、日本では AFP サーベイランスが実施されていませんでしたので、 集団発生の全体像を速やかに把握し、迅速な対策に繋げるために、感染症法に基づく積極的 疫学調査の一環で全国調査が実施されました。

その結果、2015年 8~12 月に成人を含めて全国から 100 例を超える AFP 症例が報告されました。


つまり、2015年にこの病気は「日本で集団発生」しており、そこから考えると、また日本でもいつ多くの発症例が報告されるかわからないのです。

なお、ここでは、急性弛緩性麻痺というように一括りにしていますが、日本の現在の定義では、原因がどんなものであっても、四肢などの麻痺を伴うものをこのように呼んでいまして、以下のようにいろいろと原因はあります。

・ポリオ
・エンテロウイルス(A71、D86)感染症
・ギラン・バレー症候群
・重症筋無力症
・外傷性神経炎


他にもいろいろとありますが、現在、アメリカで広がっているものについては、ポリオではなく、エンテロウイルスが検出されることが多いとはいえ、それとの因果関係もわかっておらず、

「突然この世に出現した、子どもをターゲットにした不可解な疾患」

という言い方が最も適合すると思われます。

そして、思うのは、

「なぜ、今の世の中は、病の波が子どもばかりに寄せるのだろう」

ということでした。

もしかすると、過去に取りあげたさまざまなことが複合的な要因になっているのかもしれないとも考えたり

子どもの疾患は、日本を含めた主要国の場合、アレルギーやメンタル的なものなどを含めて、とても増えています。

アレルギーにしても、原因は「基本的に不明」というようになっていますが、しかし、たとえば、花粉症でも食べ物アレルギーでもアトピー性皮膚炎でも、

「昔はなかった。あるいは極めて少なかった」

ものではあり、今でも、たとえば、主要国以外の自然の中に暮らしているような人たちには、そのような疾患は少ないです。

主要国でも、たとえばアメリカで文明と離れて暮らしているアーミッシュの人たちには花粉症も含めたアレルギーが極めて少ないですので、ある程度の原因は「現代の生活様式にある」とは言えるはずです。

このあたりは、2015年4月の NHK スペシャル「新アレルギー治療」という番組で、アーミッシュにアレルギーが少ない理由を説明しています。

下は、そのことを説明していたサイトからの抜粋です。

北米で農耕や牧畜によって自給自足の生活を営むアーミッシュには、アレルギーが極端に少ないのですが、その理由はTレグが体内に多いためと考えられています。

Tレグは、免疫による攻撃(=アレルギー)を抑え込む役割を持っており、アーミッシュは幼少期から家畜と触れ合い、細菌を吸い込んでおり、その結果、Tレグを多く持つようになったと言われています。

逆に、現代の日本のように衛生的で細菌が少ない環境だからこそ、Tレグが増えずにアレルギーが増加したとも言えます……。

(アレルギー根本治療の“鍵”を握る「Tレグ細胞」とは?)


最近の研究で「制御性 T 細胞」(Tレグ細胞)というものが、免疫の鍵であることがわかってきていて、これがアーミッシュには「多い」のです。

なぜ多いのかという理由は単純で、アーミッシュは「過度に清潔にしていない」からです。

雑菌やさまざまな微生物や昆虫類などと共に生きるという「まともな生活」をしているからです。

そして、私たち日本人やアメリカ人は「無意味に過度な清潔の中に生きている」から「弱い」という、このような、とてもわかりやすい理屈が、医学的研究のひとつでは、すでに成立しているのです。

最終更新:2018/10/22 22:38

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