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記事詳細

2018/03/09 23:31

予測をはるかに上回り激増している宇宙線と放射線 その人類への影響は何か。気象、天候、人間の健康、地震や噴火

2018年3月6日のスペースウェザーの記事
cosmic-ray-situation.jpg

地球の成層圏の放射線量の過去2年間の推移
balloon-data-2015.jpg

予測を上回る増加を見せる宇宙線の影響はどのようなものか

NOAA や NASA などからのデータ提供により宇宙天気や太陽活動の情報を日々、提供してくれているアメリカのスペースウェザーですが、3月6日に、

「悪化し続ける宇宙線の状況」

といタイトルの記事がありました。スペースウェザーのひとつの記事は短いものが普通なのですが、この記事はかなり長く記されていたもので、現在の、そして今後の「宇宙線の状況」ついて懸念している感じがうかがえました。

まずはその記事をご紹介したいと思います。

内容的には、

・地球近辺の宇宙空間と、地球の大気圏内の宇宙線が予測以上に増加している

・それによって有人宇宙探査に影響が及ぶ可能性

・地球のさまざまな状況(気象、天候、人体の健康)に永久が及ぶ可能性


THE WORSENING COSMIC RAY SITUATION
Spaceweather 2018/03/06

悪化し続ける宇宙線の状況

宇宙線の状況が悪化し続けている。これは研究誌「Space Weather」に掲載されたばかりの新しい論文の結論だ。

ニューハンプシャー大学のネイザン・シュワドロン(Nathan Schwadron)教授が率いた研究は、人体等に危険でもある深宇宙からの放射線が、これまでに予測されていたよりも速いペースで加速していることを示した。

シュワドロン教授たちの研究グループが最初に宇宙線に関する警報を鳴らしたのは、今から 4年前の 2014年のことで、それは NASAの月周回無人衛星「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」に搭載された、放射線の影響の調査のための宇宙線望遠鏡「 CRaTER 」のデータの分析から得たものだった。

それによれば、地球と月の間の宇宙空間の宇宙線レベルは、過去数十年の宇宙時代(人類が宇宙への探査等を始めた時代のこと)には見られなかったレベルでピークを迎えており、宇宙空間の放射線環境が悪化していることがわかった。

シュワドロン教授らは、この宇宙線レベルは、宇宙飛行士たちに危険が及ぶ可能性があるものであること指摘し、2014年の発表時よりも、さらに「宇宙空間で人間が移動できる時間(宇宙空間に滞在する時間)」を短縮した。

論文では、30歳の男性の宇宙飛行士がアルミシールドを搭載した宇宙船で宇宙を飛行できる限度日数は、1990年には 1000日だった。しかし、2014年の宇宙船のレベルでは、700日が限度だという。

「これは大きな変化です」と、シュワドロン教授は言う。

銀河宇宙線は、太陽系の外からやって来ている。それらは、超新星爆発および宇宙の他の暴力的な事象によって地球に向かって加速される高エネルギー光子と亜原子粒子の混合物だ。

そのような宇宙線から最初に私たちを守ってくれるのは「太陽」だ。

太陽の磁場と太陽風は、太陽系に侵入しようとする宇宙線を遮る「シールド」を作り出すために組み合わされている。

太陽が宇宙船を遮る作用は、11年間周期の太陽活動とシンクロしており、太陽活動の最大期に最も強くなり、そして、太陽活動の最小期には最も弱くなる。

今、その太陽の防御に問題が起きている。

研究者たちが新しい論文で指摘しているように、太陽のシールドが弱体化しているのだ。

シュワドロン教授は以下のように述べる。

「過去 10年間、太陽風は低密度と低い磁場強度を示してきましたが、現在は、宇宙時代には決して観察されなかった異常な状態を表しています。このように太陽活動が著しく弱い結果として、私たちはこれまでで最大の宇宙線の放射を観測しているのです」

シュワドロン教授たちは、2014年に、次の太陽活動極小期に宇宙線の状態がどのように悪化するのかを予測するために、太陽活動に関する主要なモデルを使用した。現在、そのモデルにより 2019年から 2020年の状況が予想されている。

教授は以下のように言う。

「私たちの以前の研究は、ひとつの太陽活動極小期から次の活動極小期までの間に、宇宙線の量率が最大で 20%増加することを示唆しました。実際、過去 4年間に CRaTER によって観測された実際の宇宙線量率は予測値を最大で10%超えており、放射線の環境が予想以上に急速に悪化していることがわかったのです」

太陽の次に、地球上空にさらに 2つの宇宙線に対してのシールドラインがある。

それは、磁場と地球の大気だ。

このどちらも宇宙線の地球への突入を緩和する。

しかし、現在、その地球の上でさえ、宇宙線の増加が観測されているのだ。

スペースウェザーは、学生たちと共に 2015年以来、ほぼ毎週、成層圏に宇宙天気観測のバルーンを打ち上げている。これらのバルーンに搭載されたセンサーは、地球の大気に突入してくる放射線(X線とガンマ線)が 13%増加していることを示した。

これらのバルーンで検出される X線とガンマ線は、銀河の一次宇宙線が地球の大気に衝突することによって発生する「二次宇宙線」だ。

これらは地球の表面に向かって放射線を放つ。 そのセンサーのエネルギー範囲は10keV 〜 20MeV で、これは、医療用 X線装置や空港のセキュリティスキャナーのエネルギー範囲と同じくらいだ。

これらの宇宙放射線は私たちにどのような影響を与えるだろうか。宇宙線は民間航空会社では、空中の乗客、乗務員に多量に放射される。飛行機のパイロットは国際放射線防護委員会によって業務上での放射線作業者として分類されている。

いくつかの研究では、宇宙線が雲を作り出し、また落雷を引き起こすことが示されており、宇宙線が天候や気候を変える可能性があることがわかり始めている。

さらに、地上の一般的な人々における「宇宙線と心臓の不整脈」を結びつける研究が存在する。

これから、太陽は、過去1世紀の間で最も活動の弱い状態を迎える可能性がある中、宇宙線は今後さらに激化すると思われる。

ここまでです。

宇宙線の観測が開始されたのは、今あるデータでは 1965年からのもので、すでに 50年以上経っているのですが、少なくとも、その 50年間の中で最も宇宙線の量が多い時期に、現在並ぼうとしています。

過去 53年間で最も宇宙線が多かったのは 2009年のことですが、2017年からそのレベルに近づいていて、このままだと 2009年のレベルを超えていくのは確実だと思われます。

1965年から2018年までの宇宙線量の推移(フィンランドの観測地点)
cosmicray-1965-2018.jpg

冒頭に載せましたスペースウェザーの「放射線量の推移」は、アメリカのカリフォルニア上空の成層圏でのもので、過去2年で 13%上昇したことを示しています。もう一度載せておきます。

balloon-data-2015b.jpg

そして、決して今がピークではなく、一般的に、本格的に宇宙線が増加するのは、太陽活動が完全に極小期に入ってからですので「これから」ということになります。

それでも、先ほどの記事にありますように、現時点ですでに、

> 今、その太陽の防御に問題が起きている。

ということになっていまして、つまり「太陽による防御が弱い」のです。

これから、さらに太陽の防御は弱くなりますので、地球周辺の宇宙空間と、そして「地球上に」宇宙線(第二次宇宙線としての放射線)が増えてくることは確実の情勢です。

それでどんなことになるか・・・というのは実際のところは何ともいえないにしても、これまでの科学的研究などから、地球上での影響として、ある程度確実だと思われるのは、

・宇宙線が増加すると雲が増える

・宇宙線が増加すると雷の発生が多くなる

・宇宙線が増加すると心臓疾患(急停止など)が増える


あると思われます。

2017年の『宇宙天気と、突然の心臓死』という論文では、以下のように結論付けられています。

頻脈性の突然心臓死は、より高い宇宙線活動および、より弱い地磁気活動を伴う状態において、著しいレベルでより頻繁に起こる。

また、「雲と宇宙線」についても、2010年頃から何度も記事にさせていただいていますが、比較的最近のものは、

・スベンマルク博士の異常な愛情が今ここに結実 :「雲の生成は宇宙線によるもの」という説が25年にわたる観測の末に「結論」

solar-cloud-2016.jpg

「雲は宇宙線によって作られている」

という説があることを知ったのは、今から5年ほど前の 2011年のことでした。

そして、その結果がネイチャーに掲載されたものを記事にしたものが、今、日付けを見てみますと、まさにほぼ5年前の 2011年8月26日のことでした。

なお、下のグラフは、23年間分の「雲の量と宇宙線量の相関」です。ほぼ完全な一致を見せていることがおわかりかと思います。

1983年から2006年までの雲の量と宇宙線量の推移
cosmic-ray-clouds2006c.jpg

これは簡単に書けば、

「地球の高層圏へ突入してくる宇宙線の量が多くなればなるほど、地球の雲の量は増えることを示唆している」

ということになるはずです。

もちろん、雲の量が増えるということが単純に「地球の悪天候の増加」を意味するのかどうかはわかりません。

しかし、一般論でいえば、「雲が多い」という条件は、穏やかな日々が増えるというよりは、悪天候が増えると考えた方がわかりやすい気がします。

今でも十分に地球は悪天候が極限まで進んでいる感じもしますけれど、宇宙線がさらに増えるのはこれからですので、

「今後はさらにこの天候の状態が激化する可能性」

があると考えるのが妥当ではないかと思います。

そして……あとひとつ挙げておくとすれば、これは科学的な論拠が乏しいものではあるのですけれど、個人的にとても魅力に感じている説が、

「宇宙線が増えると、火山の噴火と地震の発生が増える」

というものです。

この説を知ったのは、もう 10年ほど前の 2008年ですが、その後の 2011年に、

・太陽活動と地震・噴火の活動に関しての2つの考え方

大まかには、以下のようなことを言っていると思います。

・地震を起こすトリガー(発生に至るシステムではなく、あくまで引き金)となるのは宇宙線。地震の起きるシステムは今まで語られていた「力学的」なものではなく、化学的(ケミカル)な反応現象。

・今年(2008年)の初頭から宇宙線がかつてないほどの量、降っており、今後しばらくは火山活動がやばい。

・太陽の黒点活動と宇宙線には活動の相関関係がある(ただし、今までとは逆の相関。つまり、太陽活動が弱いほうが宇宙線の放射が多くなるので影響を受ける)

3つめのは、これはちょっとわかりにくいかもしれないのですが、私が考える分には、要するに、

1 太陽活動が強い → 太陽風(磁気)や太陽光線が多く、遮られる宇宙線がある(かもしれない)

2 太陽活動弱い → 太陽風(磁気)や太陽光線が少ないので、宇宙線は地球にたくさん届く

というようなことではないかと。

つまり、宇宙線が地震や噴火のトリガーとなっているのなら、太陽活動が弱い時のほうが地震や噴火は多くなるということになります。

しかし、この「太陽活動が弱い時のほうが地震や噴火は多くなる」ということに関しては何ともいえない部分があります。

というのも、「地震そのものがこの100年で増えている」というようなデータはあるからです。下のグラフは、Modern Survival Blog に昨年あったものです。

グラフは、それぞれ、左から

・1900年からの年平均の地震数
・2000年から2009年までの10年間の年平均地震数
・2010年の地震の数

となっています。

マグニチュード 5から 5.9の地震
a-2010-earthquakes-magnitude-5.jpg

マグニチュード 6から 6.9の地震
b-2010-earthquakes-magnitude-6.jpg

マグニチュード 7から 7.9の地震
c-2010-earthquakes-magnitude-7.jpg

となっていて、データ数が多く比較しやすい「マグニチュード 5から 5.9の地震」などを見ると、やはり「地震は増えている」と考えるのが妥当なのではないかと思います。

そんなわけで、まあ、正直、宇宙線と地震や噴火のトリガーの関連の話は、私は大好きな話のひとつですが、それをデータに当てはめると、今ひとつわかりづらいという部分はありそうです。

長くなってきましたので、もうひとつのほうにうつります。

[資料2 太陽フレアと地震発生の関係]

これは要点をまとめましたが、概要の冒頭はそのまま記します。

太陽面での爆発現象である太陽フレアと、地球での地震との間に何らかの相関関係があるのかどうかを探るために、 1991年から 2007年までの間に発生した太陽フレアと、その間に全世界で発生したマグニチュード 4以上の地震との関係の研究に関する論文を発表する。1991年から 2007年までの間に世界で発生したマグニチュード 4以上の地震の数は 682ケースとなる。

という文言から始まります。

Whether solar flares can trigger earthquakes?
米国地球物理学連合論文 2007年5月

太陽フレアは地震のトリガーとなり得るのか?(要点)

・太陽フレアの規模の中で重要と見なされるBクラスからXクラスまでの太陽フレアの発生後、10時間から 100時間後に発生していたことが示される多数の地震の存在。

・太陽フレアの増加と地震の発生の時間や遅れには関係があると認められる。

・ただし、大きなフレアが大きな地震と関係するという証拠は掴めなかった。つまり、フレアの規模と地震の規模の関連は見当たらなかった。

・太陽フレアの発生位置(太陽のどこで発生したか)と地震の発生やその規模には興味深い関係が見られるが、特定して書ける段階ではない。

・推論としては、太陽フレアによって放出された荷電粒子が、地球の磁場圏でリング状の流れを作り、それが断層帯でプレート運動を強めるという可能性。

というようなもののようです。

あと、論文自体は読めないですが、独立行政法人「科学技術振興機構 JST」というところの科学技術文系データベース「JDream II」というところに、

・Universality in Solar Flare and Earthquake Occurrence
(太陽フレアと地震の発生の普遍性)

という論文のタイトルがあるようです。

そういう研究は各所で進められてはいるようです。

どれも、研究の目的は「地震や噴火の予知」ということになるわけで、「発生を防ぐことはできない」という認識の中で、どうするかということになるのだと思います。特に、巨大な火山の噴火は世界的に気候を変えてしまう(寒冷化、あるいは太陽の日照時間や光度が減る)可能性も高く、文明存亡に関わることではあります。


なお、地震や噴火の資料に関して、最近、大変に興味深い資料を教えていただきましたので、近いうちにご紹介したいと思います。ひとつは PDF ですので、適度に編集いたします。これは「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性」というタイトルで、娯楽系ではなく、学術系の文書ですが、きわめて刺激の強い内容のものです。

日本に住んでいる我々にとっては怖い内容ですが、逆に知っていてもいいのかもしれないと思いますので、今、編集しています。

という記事に書いたことがあります。

その後もこのことについては書くつもりだったのですけれど、この記事を書いた少し後に東北での地震が起きまして、地震のトリガーを書くことに気が進まなくなり、しばらくは書くことはありませんでした。

その記事には、現在は、東京工業大学地球生命研究所特命教授や、岡山大学地球物質科学研究センターの特任教授をされている丸山茂徳教授の以下の説をご紹介しています。

2008年に丸山茂徳教授が述べていた理論
・地震を起こすトリガー(引き金)となるのは宇宙線。地震の起きるシステムは今まで語られていた「力学的」なものではなく、化学的(ケミカル)な反応現象。

・地球内部まで到達できる上に極めて高いエネルギーを持つ物質は宇宙線しかない。

・太陽の黒点活動と宇宙線には活動の相関関係がある(太陽活動が弱い時は、宇宙線が多くなる)。


というようなものです。

そして、この説から 10年後の今、かつてないほど宇宙線の量が増えている中で「かつてないほど噴火が増えている」という現状は印象的にうつります。

とはいえ、これに関しては、データ以外では証明しようがなく、実証がとても難しいものですので、魅力的な説でありながらも、それ以上の進展は難しいようです。

最終更新:2018/03/09 23:31

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