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2018/10/23 20:31

インドネシアのクラカタウ火山の活動が激化。1日に63回の噴火
2018年10月21日
クラカタウ火山の激しい噴火を報じるインドネシアの報道より
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今から1ヶ月ほど前に、インドネシアのクラカタウ火山で「 1日に 56回の噴火が発生する」という出来事を下の記事でご紹介したことがありました。

クラカタウ…カトラ山、そしてイエローストーン…。地球を代表する「モンスター火山」が次々と噴火や、その予兆を見せる夏の終わり

クラカタウ火山の激しい噴火を伝える9月23日の報道より
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夏の終わりと共に急激に活溌化し始めた3つのモンスター級火山

9月23日 噴火するクラカタウ火山
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「 21世紀は、20世紀とは違う地質活動の時代となっている」ことについて、今年 4月に以下の記事で取りあげたことがありました。

地震と火山の噴火においては「21世紀の地球は明らかに20世紀と違う」ことが明らかになってきた今、環太平洋火山帯の今後をどう考えるべきなのか

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収まりそうもない環太平洋火山帯の活動の中で

いわゆる「人的被害」が比較的少ない事象が多いせいか、最近は、地震にしても火山噴火にしても、地質的なニュースはそれほど話題とはなりませんが、現実には、「地質活動は着実に活動のペースを上げている」といえる状態が続いています。

昨日、インドネシアのシナブン山がまたしても非常に大きな噴火を起こしたのですけれど、このシナブン山は 2月から活動の徴候を見せていなかったのです。

「もしかして今回の活動は終息した?」と思っていたところに、巨大な噴火が発生したわけで、日本の新燃岳などの例もそうですけれど、やはり今のこの時期、そして、これからの火山活動と地震については、「終息する方向ではない」というように思います。インドネシアのシナブン山の昨日の噴火については下の記事で取り上げました。

活動が終息したと思われていたインドネシア・シナブン山で、それまでの規模を上回るレベルの大噴火が発生。山は火砕流と噴煙に包まれる

2018年4月6日のインドネシア英字メディアより
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2010年に 400年ぶりに噴火して以来、断続的に巨大な噴火を続けているインドネシアのシナブン山が、4月6日、またも非常に大きな爆発的噴火を起こしました。

4月6日 3.5kmの噴煙を上げるシナブン山
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シナブン山の場所
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前回の噴火は 2月19日のことで、その際には以下の記事でご紹介しています。

監視カメラがとらえていたインドネシア・シナブン山の大噴火での火砕流の様子

2018年2月19日のシナブン山の大噴火の際の火砕流
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2月19日、インドネアのシナブン山が、噴煙の高さが 15キロメートルに迫る近年で最大級の噴火を起こしました。

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この日の大噴火の際、シナブン山は大規模な火砕流も発生させていたことが、監視カメラの記録でわかりました。以下は、その記録の一部です。

https:●//youtu.be/FeMbe2W_BTs

この 2月の噴火の後、シナブン山の活動は急速に収まっていき、その後、噴火はまったくない状態が続いていました。

このまま今回の一連の活動が終息に向かうのかというような雰囲気もあったのですが、4月6日、今年最大級ともいえる大噴火が発生したのでした。

環太平洋火山帯のことについて詳細に取りあげていました最近の英字紙「ニッケイ・アジアン・レビュー」の記事をご紹介しようと思います。ニッケイ・アジアン・レビューは日本経済新聞の英字雑誌ですが、日本語では同様の記事が見当たらなく、また内容的にも環太平洋火山帯の歴史と現状がよくまとめらてれいましたので、ご紹介したいと思いました。

そこにある地図を見ますと、やはりアジアの中でも、日本は地質学者たちから危険だと想定されているエリアが大変に多く(全域が世界最高レベル級の危険性)、そういう場所に暮らしているのだなあと実感します。

下の図は、「赤が濃いほど大きな地震の災害のリスクが想定される」という意味です。
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また、その記事の中で特に注目したのは、「地震や火山の自然災害が穏やかだった 20世紀が終わり、21世紀になって以来、その数は飛躍的に増えている」ことが示されていることです。

感覚的な話ではなく、「実際に、21世紀になってから飛躍的に火山の噴火と地震は増えている」のです。

噴火だけでも、

・20世紀全体 → 65の火山の噴火

・21世紀 → まだ18年間で 25の火山が噴火

ということになっていて、この数字の通りに行くと「 21世紀は 20世紀の倍の数の火山の噴火があり得る」ということにもなるのかもしれません。

Is the Ring of Fire becoming more active?
Nikkei Asian Review 2018/04/04

環太平洋火山帯の活動はさらに活溌になっているのか?

インドネシアのリゾート地バリ島にあるアグン山が昨年 9月に振動を記録し始めた時、当局は、この火山が 1963年に起こした壊滅的な噴火を思い起こし、バリ島の住民たちに避難を命じ始た。その後、アグン山の火山性地震は 11月21日まで続いた後、最終的には噴火が始まり、14万人もの人々が避難した。それから 4ヵ月以上が経過したが、いまだ活動は収まっていない。

日本では、今年 1月23日、東京から北西約 150キロメートルに位置する草津白根山が、直前まで目立った予兆もなく突然噴火したことは、専門家たちを驚かせた。この噴火では、噴石により自衛隊員 1名が死亡した。

同じ頃、フィリピンにあるマヨン山が、灰と溶岩を噴出し始め、56,000人以上の周辺住民たちが避難している。

その後、2月中旬に、インドネシアのスマトラ島にあるシナブン山が高さ 7キロメートルに及ぶ噴煙を上げる大噴火を起こした。住民たちは避難し、子どもたちが泣き叫ぶ様子が報道された。

シナブン山の噴火の後、2月下旬にはパプアニューギニアでマグニチュード 7.5の大地震が発生した。これは、この地域では過去1世紀で最悪の地震となった。そして、この月の初めには、台湾の花蓮県でマグニチュード 6.4の地震が発生し(2018年花蓮地震)、17人が犠牲となった。

このような落ち着かない出来事が連続して起きている日本、フィリピン、インドネシア等は「環太平洋火山帯(Ring of Fire)」と呼ばれている太平洋を囲む馬蹄型の形をしたベルト状のエリアの上にある。この環太平洋火山帯には、世界で最も活発な火山の約 4分の 3が存在する。

一部の専門家たちが「比較的落ち着いた地震活動の時代」だったと呼ぶ 20世紀が終わり、現在の 21世紀は、劇的な地震と火山の噴火の増加を見せている。

たとえば、この 21世紀の最初の 18年間(2001年1月〜 2018年3月)まで、世界では約 25の火山の噴火が観測された。比較すれば、20世紀は全体を通して観測された火山噴火は 65だったので、ペースとしては相当増えていることになる。

インドネシアには 127の火山がある。その半数以上は、その火山活動のために継続的に監視される必要がある。オーストラリア国立大学のアンソニー・レイド(Anthony Reid)氏は、「実際に起きていることを書けば、インドネシアのスマトラ島からジャワ島、バリ島、そして、ティモールまでのインドネシアの火山の連鎖構造が、世界の構造的境界面の中で最も危険なものとなっています」と述べている。

インドネシアは 20世紀に穏やかな地震活動の時代を過ごしたが、事態は変化していく可能性があるとレイド氏は警告している。そして、「そもそも、インドネシアでの(地震と火山噴火による)死者数は、すでに 20世紀を上回っているのです」と述べる。

インドネシアでのこの大規模な死者数は主に 2004年のインド洋の大津波によるものだ。これはスマトラ島北部のマグニチュード 9.2の地震に伴うもので、記録に残っている上での地球で起きた地震の中で3番目に大きなものであった。この津波により、インドネシアのアチェ州では津波により約 24万人が死亡した。

フィリピンには約 300の火山がある。そのうち 24の火山が「活発」であるか、過去 1万年間に少なくとも 1回の噴火を記録しているとフィリピン火山・地震学研究所(Phivolcs)の責任者レナト・ソリドゥム(Renato Solidum)氏は言う。

フィリピン火山・地震学研究所は現在、カンラオン山とマヨン山の他、そこから 70キロメートル離れたブルサン山も同時に監視している。この中でも、マヨン山は、17世紀から 60回も噴火している活溌な火山だ。

地震は地上で発生した場合には、建物やインフラを崩壊させ、海底で発生した場合には、津波を発生させる可能性がある。 2011年3月の日本でのマグニチュード 9.0の地震では、その直後に起きた津波により、約 16,000人が死亡した。

インドネシアは、4つの主要なプレート(ユーラシア、インドオーストラリア、太平洋、フィリピン)の構造の中にあり、世界で最も地震の多い地域だ。メガトラスト・セグメントと呼ばれる 2つのプレートの会合地点は、ジャカルタ近くのスンダ海峡とジャワ南部の海の間に広がっている。ここ数年、インドネシアでは、大きな地震を経験していないが、首都ジャカルタに影響を与える可能性のある大きな変化があるとという懸念がある。

インドネシア科学院の地震地質学者ダニー・ヒルマン・ナタウィジャジャ(Danny Hilman Natawidjaja)氏は、「私たちはそれを地震空白域(Seismic gap)と呼んでいます」と言う。「非常に大量のエネルギーが蓄積している可能性があるため、発生した場合に大地震となる可能性を秘めていることを意味します」と述べる。

ナタウィジャジャ氏は、「マグニチュード 8.5以上の地震が発生する可能性は高いと思われますが、それがどのように起きるかどうかを知る術はないのです。しかし、この数年のうちに、あるいは今後数十年の中でそのような地震が起きる可能性があるのです」と言う。

火山の噴火も地震も自然の確かな現象だが、その発生を予測することは非常に困難だ。

世界的に連鎖する大災害

20世紀の相対的に穏やかだった火山活動が、21世紀に入ってからは信じられないほど恐ろしい活動を見せている。

世界で初めて火山の噴火が報道されたのは 1883年 8月27日のことで、インドネシアのクラカタウ火山の噴火の際だった。潜水艦による電信やニュース配信網の出現で、世界の主要な都市で、クラカタウ火山の噴火はリアルタイムで報じられた。

クラカタウ山の噴火は、世界で初めてのグローバル・ニュース報道であっただけでなく、大自然が遂行した真の世界的な環境災害でもあった。クラカタウ山の噴火によって地球の上層大気の汚染が 5年間続き、世界的に気候に影響を与えたために、世界のすべての地域で気候と食糧生産が影響を受けた。

クラカタウの噴火はその被害の様相も壊滅的だった。その際の噴火で犠牲となった 35,000人のうちの多くは、その噴火により発生した津波の被害者だった。当時の東インド諸島の人口は約 3,400万人で、現在の 2億6,600万人の約 13%だったことを考えると、将来同じような事象が起きた際の被害の可能性が示唆される。

それ以来、この地球では同じような規模の噴火は起きていない。つまり、今、地球に生きている私たちの中で、このクラカタウの噴火の経験者はいないのだ。

1980年には、アメリカのセントヘレンズ山が噴火し、1991年には、フィリピンのピナツボ山が噴火して 800人以上が犠牲となったが、どちらも、クラカタウの噴火と比べると規模の小さなものだった。

しかし、1883年以前には、たとえば 1815年にインドネシアのタンボラ山の噴火により 9万人が死亡した。この時のタンボラ山の噴火は、クラカタウ山の 10倍のエネルギーがあったと考えられており、記録に残る中では、地球上で最も強力な噴火だったと考えられている。

1815年のインドネシアのタンボラ山の噴火の際にも、その噴火による雲が世界中の空を覆い、世界は寒冷化した。そして、各地で飢饉、疫病の流行、社会不安を引き起こした。スイスでは食糧暴動が起き、中国の雲南省では異常な冬となった。

そして、翌年 1816年は各地が「夏のない年」として記憶された。

警報体制は整っているが

インドネシアの火山群は、火山地質災害緩和センター(PVMBG)によって監視されている。

1963年にアグン山が噴火したとき、その噴火は 1年間続き、約 1,500人が死亡したが、当時のスカルノ大統領は、政治的理由でアグン山の噴火に関するニュースを報道管制により押さえ込んだ。

火山地質災害緩和センターによれば、1815年のタンボラ山の噴火のような壊滅的な大噴火が起きる可能性は非常に低いという。また、仮にあったとしても、そのような大規模噴火では一般的に事前の徴候があるために、警告や避難の時間的余裕はあると述べている。

日本においても新たな発見があった。神戸大学海底探査センターの巽好幸(たつみ よしゆき)教授たちのチームが、今年 2月に発表した論文で九州の南約 50キロメートルの場所にある海底火山「鬼界カルデラ」に巨大な溶岩ドームの存在を報告している。この「鬼界カルデラ」は、先ほどのインドネシアのタンボラ火山より 10倍強力な火山爆発指数(VEI 8)に属している。

巽教授によると、約7300年前に最後に噴火したこの鬼界カルデラの溶岩ドームの中に圧力が高まっているという。

同時に巽教授は、世界中の火山学者たちにしても、実際に世界最大級のような火山の噴火が起きた時に具体的にどうなるのかということについては、ほとんどわかっていないと述べている。「たとえば地震のような前兆はあるだろうとは思いますが、まだ人類の文明は、超巨大火山の噴火発生のメカニズムを解き明かしてはいないのです」と巽教授は述べる。

巽教授は、日本の鬼界カルデラが噴火した場合、最悪では 9000万人が死亡する可能性があるとしている。その場合、大阪では 50センチの降灰があり、東京でも 20センチの降灰を予測している。

他にも、火山爆発指数が 8(VEI 8 =火山の爆発指数で最大)の噴火をしたと考えられている超巨大火山が世界には十数ある。アメリカのイエローストーン、ニュージーランドの北島、そして先述したインドネシアの火山、日本の九州南部にある姶良(あいら)カルデラなどだ。

超巨大火山の噴火は極めて稀にしか起こらない。しかし、その数字と「現実」を冷静に比較すると、その「稀」という概念はあまり気休めにならないかもしれない。

たとえば、先ほどの日本の鬼界カルデラが今後 100年の間に噴火する可能性は、巽教授によれば「 1%」だ。しかし、1995年に神戸で発生した阪神・淡路大震災は、それが起きるまで「そのような地震が起きる確率は 30年で 1%」だった。

つまり、「 100年間で 1%」という概念は同時に、「いつでも起きる」という捉え方ができる概念でもあるのだ。

その中で、ご紹介した日経アジアン・レビューの記事「環太平洋火山帯の活動はさらに活溌になっているのか?」の中に、以下のような記載があります。

専門家たちが「比較的落ち着いた地震活動の時代」だったと呼ぶ 20世紀が終わり、現在の 21世紀は、劇的な地震と火山噴火の増加を見せている。

たとえば、この 21世紀の最初の 18年間(2001年1月〜 2018年3月)まで、世界では約 25の火山の噴火が観測された。比較すれば、20世紀は全体を通して観測された火山噴火は 65だったので、ペースとしては相当増えている。


この火山噴火について、「 21世紀は 20世紀とは違う」ということは、グラフで見るとわかりやすいと思われます。

下は、1850年から 2010年まで、つまり 19世紀の終わりから 20世紀、そして 21世紀にかけての「世界の火山噴火の平均数」の推移です。

19世紀から21世紀までの火山噴火数の推移
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年によりバラツキはあるとはいえ、基本的には「火山の噴火は、20世紀から 21世紀に向けて、一貫して増え続けた」といえるグラフだと思います。

1850年あたりとの比較では、21世紀は「まったく違う時代」だということがよくわかります。

いずれにしましても、そういう 21世紀が進んでいる今、「歴史的に著名な複数の火山」の活動について、この数日の間に報道されていました。

そのことをご紹介したいと思います。

それぞれの火山は、

・クラカタウ火山(インドネシア)

・カトラ火山(アイスランド)

・イエローストーン(米国)


です。

どれもこれも過去の大規模な噴火がよく取りあげられるものですが、このうち、クラカタウ火山が激しい噴火を起こし、アイスランドのカトラ火山は科学者たちの調査により「噴火の段階に入った」とされました。そして、イエローストーンは「毎度毎度の」感もありますが、またも新しい活動を見せています。

それぞれご紹介させていただこうと思います。

1日に50回以上の噴火を起こしたクラカタウ火山

今噴火しているのは、クラカタウ火山の領域の「アナク・クラカタウ」という火山島で、これはインドネシア語で「クラカタウの子ども」という意味です。

しかし、実際には、これはクラカタウ火山そのものでもありますので、そのことを少しご説明させていただきます。

現在噴火しているアナク・クラカタウは、1927年までは「存在しない」火山でした。

なぜかというと、その数十前の噴火(1883年)により、クラカタウは「島ごと吹き飛んでしまった」ために、もともとのクラカタウ火山のあった島は、噴火で大半がその姿を消したのです。

その後、 1927年にクラカタウ火山のあった海域で海中噴火が始まり、そして、現在、海抜 400メートルを超える火山島となっています。

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上の地図でわかりますように、今噴火しているアナク・クラカタウというのは、「クラカタウの子ども」という名称ではありますが、「元のクラカタウ火山のあった場所で、噴火が起きている」という話であり、

「クラカタウ火山そのもの」

の噴火と考えて間違いないと思います。

https:●//youtu.be/ywkNoBQ8bpU

このクラカタウ火山は、歴史的にわかっている中では、1883年の大噴火が知られていまして、これは、Wikipedia から抜粋しますと、以下のようなものでした。

噴火で発生した火砕流は海上 40kmを越え、スマトラ島ランプン湾東部で人間を殺傷した。また、噴火により発生した津波が周辺の島を洗い流し、航海中の船を激しく揺さ振った。

死者は 36,417人に及び、2004年にスマトラ島沖地震が起こるまではインド洋における最大の津波災害であった。

この際の噴火の規模は、地質学史上、第 5番目の爆発規模と考えられている。


この火山は、正式には「アナク・クラカタウ」と呼ばれ、これは、インドネシア語で、「クラカタウの子ども」という意味ですが、下の図にあるクラカタウ火山の経緯でわかりますように、要するに、これは「クラカタウ火山のあった場所で噴火が起きていた」ということになります。

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このアナク・クラカタウは、その後も活動を継続させていましたが、10月中旬から 9月よりさらに激しい噴火の兆しを見せ始めました。

そして、冒頭のインドネシアの報道にありますように、10月19日から 20日にかけて、「 63回の噴火が発生する」という激しい状態となっています。

10月15日から20日までの間のクラカタウの活動の様子

10月15日の噴火
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10月19日の噴火
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10月19日の噴火
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10月20日の噴火
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10月20日の噴火
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インドネシアでは、今年は、火山の噴火と大きな地震が相次いでいて、バリ島のアグン山の噴火や、スラウェシ島の地震と津波による被害などを以下の記事などでご紹介してきました。

昨年54年ぶりに噴火したインドネシア・バリ島のアグン山で再び大規模噴火。7月2日には3回連続で爆発的噴火が発生

7月2日のバリ島のローカルメディアより
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2017年 11月に、1963年以来となる大噴火を起こしたバリ島のアグン島。その際の噴火は、噴煙が1万メートルほどにも達する大規模なものとなり、観光地でもあるバリで飛行機便の混乱などを引き起こしました。

インドネシア・スラウェシ島の地震と津波による死者数が「1200名」に達する。犠牲者の数は、さらに大幅に拡大する可能性

インドネシアの地震と津波の被害の拡大を伝えるシンガポールの報道
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このような活動の中でも、クラカタウ火山は、特に過去に極めて大きな活動を繰り返して火山の場所でもあり、そのクラカタウの活動が激しさを増しているということ自体が、環太平洋火山帯の地質活動が収まっていないことの現れということになるのかもしれません。

最近、日本の地質活動はやや落ち着いている感じがありますが、世界全体の地震と火山噴火の状況を見ますと、環太平洋火山帯にある日本もまた決して安心できない状況の中にあると言えそうです。

最終更新:2018/10/23 20:31

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2018/10/23 19:30

ローマに降り落ちた異常な雹嵐を見て思う、最近の自然を介した示唆

10月21日 異常な雹嵐に見舞われたイタリアの首都ローマの光景
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さて、今回の話題は「雹(ひょう)」です。

ここ2年から3年ほど、世界中で雹の状態がどんどん激しくなっていて、最近では「明らかに異常」な雹嵐が世界各地で発生していますが、その「異常な雹」がついにローマにやって来たということで、まずはそのことをご紹介したいと思います。

聖地が雹に打たれるとき
「雹がついにローマにやって来た」という表現は変ではあるのですが、ローマという場所はキリスト教と縁の深い場所でもあり、そして、そのキリスト教の聖典には「雹」の下りがよく書かれているというようなこともあるのですけれど、まずは、その 10月21日のローマでの雹嵐の後の様子をご覧いただきたいと思います。

冒頭の写真もそうです。

そして、おそらく、あるいは少なくとも近現代のローマがこのような状態になるのは、これが初めてのことではないかと思います

2018年10月21日 イタリアの首都ローマにて
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これは雪ではなく、雹ですからね。

明らかに異常な状態だというようにも思えます。

なお、当日の動画もあり、下がその日のローマの様子です。

https:●//youtu.be/0WqWLkPmRHo

どのくらいの範囲でこれほどの雹が降ったのかは報道を読んでもよくわからないのですが、ふと、

「バチカンはどうだったのかな」

とは思いました。

というのも、今年の 2月、「バチカンのすぐそばのローマの街中で、巨大なシンクホールが発生した」という出来事があったからです。

以下の記事でそのことをご紹介しています。

バチカンに近いローマ街中で巨大なシンクホールが発生。昨年末以来、イタリアの首都で繰り返され続けるシンクホール事象

イタリアの地質に何が起きているのか?

2018年2月14日の報道より
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イタリアの首都ローマで 2月14日、突然巨大なシンクホールが発生し、その場所が道路だったために少なくとも6台の自動車が穴に飲み込まれるという出来事がありました。発生したのは、バチカンに近いローマ北西のバルドゥイナ(Balduina)という場所においてでした。

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穴の深さは 10メートルに及ぶものだそうですが、飲み込まれた車は停車中で、人が乗っていなかったために、これだけ大規模なシンクホール事案にもかかわらず、負傷者などは報告されていません。

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今回のシンクホールは非常に大規模なものですが、実はローマでは、2017年の12月頃からシンクホール事案が相次いでいます。

昨年11月にローマに発生したシンクホール
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今年1月にローマに発生したシンクホール
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イタリアでは火山活動も盛んで、また、一昨年より地震もとても活溌になってまして、イタリアの地質活動全体がやや不安定である可能性を指摘する専門家たちもいまして、今後のさまざまな地質的活動が注目されています。

ここ1、2年のイタリアの地資質関連の過去記事から印象的なものをリンクしておきます。

イタリアの地質活動

イタリア沖で「海底からの謎の爆発・噴出現象」が確認される。未知の海底火山が活動し始めた可能性も
イタリアの報道より
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イタリアで、「原因不明の爆発現象が海で起きている」ことが現地メディアで報じられています。既知の海底火山がある場所ではないようで、専門家たちが現在、海底の調査を進めているようです。

確定した原因はわかっていませんが、イタリアの地質学専門家たちは「未知の海底火山の活動の可能性がある」としています。

下の動画は最初に現地の漁師の人が発見した時に撮影されたもので、それほど状況がよくわかるものではないですが、爆発・噴出と同時に、周囲の海域の色が変わっていたそうです。

爆発が起きているのは、イタリアのティレニア海にあるピアノーザ島という島の近くです。

ピアノーザ島の場所
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イタリア国立地球物理学火山学研究所(INGV)の専門家たちが該当海域の水質や水中の状況を調査しましたが、海底ではメタン濃度が高くなっていることが確認されたそうです。

海底からメタンが吹き出している様子
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それにしても、2016年以来、イタリアでの地質活動は非常に顕著なものがあります。

記事にしただけでも、2016年9月には「イタリアで未知の海底火山が6つ同時に発見される」という出来事が起きています。

6つの未知の海底火山が見つかった場所
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イタリア中部では「泥火山」の活動が確認されています。

連続した地震に見舞われているイタリア中部の村に謎の「泥火山」が形成され、泥の噴火が続く

2016年11月4日の報道より
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イタリア中部では、8月24日にマグニチュード 6.2の地震が発生した後、10月26日にはマグニチュード 6.1の地震、そして、10月30日には、イタリアの近代史でも最大級のマグニチュード 6.6の地震が発生し、その後も非常に多くの余震が続き、連続する地震におさまる気配が今のところは見えていない状態です。

そのイタリア中部のサンタ・ヴィットーリア・イン・マテナーノという場所で、「泥火山が形成されつつある」という報道がなされていました。

形成されつつある泥火山
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サンタ・ヴィットーリア・イン・マテナーノの場所
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また、イタリア中部では、昨年来、数多くの地震に美馬分けていますが、その中で「イタリア半島を縦貫するアベニン山脈が 40センチ低くなった」ということもわかっています。

そして、最近では、イタリアのエトナ山の噴火がさらに激しくなっていることが報じられ続けています。

短い期間の単位での変化はともかく、ある程度の期間の中で、これだけいろいろなことが起きているイタリアの地質的な変化がどのようなことに結びついていくのかは、地質学者たちの懸念でもあり、興味でもあるようです。

もちろん、地質的な変化の兆候はイタリアだけの話ではなく、日本も含めて、現在では全世界的なものとなっている感じがあります。

イタリア中部地震から9ヶ月で、余震の数は「6万5000回」を突破。いまだに群発地震は止まらず

被災地で祈りを捧げるフランシスコ法王 2016年10月4日
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イタリア中部で、昨年 8月24日にマグニチュード 6.2の地震が発生してから9ヶ月が経とうとしていますが、その「余震」が収まる気配がありません。

イタリア国立地球物理学火山学研究所(INGV)のデータを見ますと、今年1月に余震の回数が「5万回」を超えてからも地震の発生は続いており、この4月の終わりには、ついに 65,500 回に達しました。

昨年8月以前の穏やかな環境に完全に戻るには、まだ時間がかかるか、あるいは、地質活動の異変そのものが継続している可能性もあります。

下は、イタリア国立地球物理学火山学研究所の 2016年8月24日から 2017年4月28日までのイタリア中部での地震発生回数と、その累積数を示したものです。

2016年8月24日からのイタリア中部での地震の発生回数
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少しずつ地震の発生回数は減っているとはいえ、最初の地震のマグニチュードが 6程度だったと考えますと、ずいぶんと長い間、影響が続いていると言えそうです。

何しろ、この場所は、昨年 8月24日以前は、長い間「地震ゼロ」の地域だったのですから(過去に、大きな地震はありました)。

2016年8月24日のイタリア中部地震の前後の同じ場所

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最終更新:2018/10/23 19:30

2018/10/22 23:02

中国の大河に発生した直径800メートルにおよぶ「不思議な渦」

10月17日 中国の杭州市を流れる河川「銭塘江」に出現した渦
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中国浙江省を流れる銭塘江(せんとうこう)という大河があります。

この川の杭州市を流れる場所に「奇妙な渦」が出現したことが報じられています。

その渦はなかなか巨大なもので、渦を調査にきた警察のボートなどとの比較である程度わかります。下の写真に写っているのがその光景です。

銭塘江に出現した渦
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中国 杭州市と銭塘江の場所
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この不思議な渦の原因は、専門家によれば、地下トンネルの建設に使用された自然発生のメタンガスの結果だとのこと……っていうか、こんな大河の下に地下トンネルを建設しているということなんですかね。

いずれにしても、「異常な出来事ではない」というように当局は主張しています。

ただ、下からメタンガスが下から浮き出てくるのはわかるとして、「なぜ渦を巻いているのか」という部分は不思議な感じはします。

そもそも、川というのは「流れている」ものですし。

渦の中心のあたりは以下のようになっています。
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動画では下のようになります。

https:●//youtu.be/P6z0U9ZmloQ

空中から撮影された全景は以下のような感じで、直径は 800メートルに及ぶものだったようです。

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理解できなくはない現象なのかもしれないですが、不思議といえば不思議な感じはいたします。

最終更新:2018/10/22 23:02

2018/10/22 22:52

ロシア西部ノヴォロシースクで「生き物のように」空に漂い続けた魅力的なレンズ雲たち

10月15日 ロシア・ノヴォロシースクの空
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ロシア西部にあるノヴォロシースクという街で、10月15日、印象的な雲が、空を移動し続けていたことが、インスタグラムなどの SNS で報告されていました。

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ノヴォロシースクの場所
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これは分類としては、いわゆるレンズ雲というようなものなのかもしれないですが、何とも魅力的な形を次々と作り出していたようです。

最近のロシアでは、さまざまに「かつてなかったような雲」が見られていて、以下のような記事でもご紹介していました。

ロシア中北部の上空に広がった「何かの来襲」のような不思議な形状の雲の群れ

2017年5月18日 コミ共和国スィクティフカルの上空

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5月18日、ロシア中北部にあるコミ共和国の首府スィクティフカルの上空に「奇妙な形の雲の群れ」が来襲しました。

スィクティフカルの場所
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ロシアの首都モスクワに「円盤状の形が崩れないまま移動する」奇妙な雲が出現する

2018年8月2日 モスクワ上空に出現した雲
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雲の位置が妙に低く見えるあたりも不思議性を強くしています。

ロシアの SNS では、「このものの正体」についてさまざまな意見が出されていましたが、結局は「レンズ雲が通常でない形成のされ方をしたのではないか」というところに落ち着いています。もちろん、UFO などの超常現象だとする人たちもたくさんいますが、最近の異様な天候の状態からは、こういう奇妙な雲も作られる可能性はあるのかもしれません。

今の地球は気象そのものも大きく変わっていますので、雲の形状が変化するのも当然のことなのかもしれませんけれど、最近は恐ろしげなものの方が多かったですので、これはあまり恐ろしい感じがなくて、なんだかいいですね。

この日のノヴォロシースクの空の様子をもう少しご紹介させていただきます。

2018年10月15日 ロシア・ノヴォロシースクの空に蝟集する雲たち

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最終更新:2018/10/22 22:52

2018/10/22 22:38

アメリカの子どもの間で大流行しており、そして日本でも拡大する可能性のある「全身が麻痺したままとなる原因不明の急性疾患」。その背後にあるものは

原因不明の疾患のアメリカでの拡大を伝える報道
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今から3年くらい前から気になっていたことについて、その状況が拡大、あるいは一般化してきているような気がしまして、少し書かせていただこうと思います。

世界の主要国に「定着」しはじめているかもしれない謎の疾患

2014年に、アメリカに「奇妙な病気」が出現しました。

それは主に子どもに起きる病気で、子どもたちが、「突然、腕や脚あるいは顔の筋肉に異常を起こし、歩くことや動くことができなくなってしまい、場合によっては、まぶたを上げることも、肺の筋肉も不全となることもある」という深刻なものでした。

原因はわからず、治療法もわからないまま、2015年になっても、またその翌年になっても、同じような症状の子どもたちの疾患が報告されました。

アメリカの小児医学界は、この病気を「急性弛緩性脊髄炎」と名づけました。

これは、英語の Acute Flaccid Myelitis から「 AFM 」と呼ばれていますが、この症状を呈する場合の全般を指して「急性弛緩性麻痺」とされ、やはり頭文字をとって「 AFP 」と呼ばれます。

難しそうな日本語ですが、

・急性

・弛緩性

・麻痺

と言葉を分ければ、わかりやすくなるかと思います。つまりは、

「突然、筋肉のコントロールができなくなり、身体の麻痺が起きる」

という病気です。

2014年の時点では、ウイルスなどによる一過性の病気かもしれないと考えられていましたが、今、この AFM の子どもたちの数と「範囲」が拡大しているのです。

アメリカの報道によれば、9月までに、コロラド州、ミネソタ州、イリノイ州、ワシントン州を含む全米 16州から 38の症例が報告されたことが アメリカ疾病管理予防センター ( CDC)から発表されています。

なお、2014年に、アメリカで AFM にかかった子どもたちの数は 120名にのぼりました。

そして、その 120名の子どもたちの「その後の状況」に関しては、中には回復した例もある一方で、 2016年のアメリカの報道の中に以下のような記述があり、かなり厳しいもののようです。

2016年の米国 UPI の報道より

疾病予防管理センターによれば、これまでのところ、アメリカ全国から 32の新たな AMF (急性弛緩性脊髄炎)の症例が報告されているという。2014年には 5ヵ月間に 34の州で 120人の子どもたちが AMF と診断された。

この 2014年に診断された子どもたち 120人のうち 3人が完全に回復した。


ここに、

> 120人のうち 3人が完全に回復した。

とある部分が深刻さを物語っています。発症から 2年も経った後に「 120名のうち完全に回復したのは、たった3人だけ」なのです。

この疾患に関しては、2016年の以下の記事で、初めて取りあげています。

現代の「謎の病気」は主に子どもたちに襲いかかっている アメリカで急増する「ポリオのような麻痺性の疾患」。そして子どものハンセン病や、正体のわからない様々な疾患

2016年9月21日の米国UPIより
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子どもの病気の流行、まして、症状が重い上に「得体のしれない病気の流行」というものが出現してくるのは、親の立場としてはイヤなものですし、親とかの立場は関係なくとも、社会的に最も大事な存在といえる子どもたちに「致命的な影響を与える」ような病気の流行はどう考えても暗澹とした気分になりやすいです。

今、アメリカで、冒頭のような「ポリオ」のような病気、つまり「手や足に重大な麻痺が残る」というような病気が「子どもたちだけに」流行し始めています。

そして、その原因は「不明」、対処法も「不明」という中、患者の数だけが増え続けているのです。

新しく出現した病気はまさにポリオ

「ポリオ」という病気は、今では日本を始め、世界的に減少している疾患ですが、感染した場合、1000〜2000人に 1人くらいが、手や足などに「麻痺」が残ることがあるという深刻なものです。

1000人に 1人の重大な後遺症というと大したことがない率に思われるかもしれないですが、風邪が流行した際には、地区の中で 1000人や 2000人の風邪にかかる人たちなどすぐ出るものですが、そのように流行する病気で「1000人に 1人程度の重大な後遺症が残る」という病気は深刻だと思います。

このポリオは幸い、ワクチン、あるいは他の理由などで、今は世界でもほとんど見られないものとなりました。2015年のポリオの野生種の感染は、Wikipedia によれば、パキスタンで 52例、アフガニスタンで 19例となっていて、他はありません。

しかし、何の病気が根絶されたとしても、同じようなものがまた出てくるのが現在の地球でもあります。

以前、

・開き続けるパンドラの箱:アメリカ国立感染症研究所の感染症マップが示す、この30年間が「異常な病気の出現の時代」であったこと。そして、人類とウイルスの「歴史」が同一に見えること

その時にその時に報道などであげられる「新しく出現した病気や症状」などについて書いていたものでしたが、もう少し長いスパン、たとえば、この数十年間などでの「新たな感染症の増減」などについての具体的な状況を書いたことはありませんでした。

最近、ジカウイルスの拡大に伴い、アメリカなどでは感染症に関しての報道がとても多いのですが、それと関連して、ワシントンポストに、

「ジカウイルスだけではなく、感染症そのものが、この 30年間ほどで爆発的に増えている」

ことが指摘していて、そこにあったアメリカ国立衛生研究所の「全世界で新しく出現、あるいはかつて流行していた感染症が再び流行した」ことを示す「1984年」と「それ以降 2015年まで」を比較した感染症マップが掲載されていて、それを見て驚きました。

下がそのアメリカ国立衛生研究所の「感染症マップ」です。

1984年の感染症マップ
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1984年の時点では、世界の公衆衛生の最大の懸念は・・・というか、最大の懸念も何も、この時には「新たな感染症はエイズだけ」だったのです。

それが 2015年までに感染症マップは下のようになりました。

1984年以降の感染症マップ
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もう「ワッ」とばかりに、新たな感染症が増えたことがわかります。

地図の色の内訳の詳しくは後で記しますが、地図のうち「赤」はこの三十数年で新しく出現した感染症(新型インフルエンザやSARS、O157などを含みます)、「青」は再度流行した感染症(コレラ、ペスト、黄熱病など)となります。

「なんとなく新しい病気が増えているのではないだろうか」という感覚は、誰の中にもあったと思いますが、病気は本当に増えていたのです。

しかも、上の地図の病気のほとんどが、

「予防法も治療法もなく、対症療法しかない」

ものばかりです。

このマップが掲載されていたワシントンポストの記事は、それほど長いものではないですので、先にご紹介したいと思います。

タイトルは「ジカウイルスを超えて」、あるいは「ジカウイルスの向こうに」というような意味のものでした。

Beyond Zika: The terrifying map of things that keep NIH’s infectious diseases director up at night
Washington Post 2016/02/12

ジカの向こうに:恐ろしい感染症マップがアメリカ国立衛生研究所(NIH)の代表者に努力を続けさせている
感染症の専門家たちにとって、その仕事の中で最も恐ろしい側面のひとつが、感染症の新しい出現を予測することができないということだ。

アンソニー・フォーチ( Anthony Fauci )氏が、1984年に初めてアメリカ国立衛生研究所の代表となり仕事を始めた時には、感染症に対しての人々のすべての懸念は、その頃出現した1つの疾病に集中していた。

それは、HIV / エイズだった。

その時には、エイズウイルスがどのように拡散し、どのように人から人へと感染していき、そして、最終的にどのように感染した人たちを死にいたらしめるのかを誰もまだ正確には知らなかった。

下は、その 1984年に、フォーチ氏がアメリカ議会と協議した際に、エイズがいかに人類への脅威となり得るかを示すために使用したスライドの地図のコピーだ。(訳者注:さきほど掲載したものですが、わかりやすさのため、サイズを小さくして再度載せます)

global-examples-1984.gif

それから34年が経ち、その間に、地図は「進化」している。

フォーチ氏はインタビューで、氏が今でもその時と同じスライドを表示させていることを語ったが、同時に、

「その後は、年に1つ、ないしは2つの新しい感染症疾患が地図に追加されていくようになったのです」

と述べた。

この2年間( 2014年から 2015年)は特に忙しかったという。

「(アメリカの)ディズニーランドで流行した麻疹や、薬剤耐性結核、それに MERSや、カリブ海でのチクングニヤ熱などがありました。そして、今、私たちアメリカ国立衛生研究所はジカウイルスと対峙しています」と、フォーチ氏は言う。

「今では、常に新しく出現した感染症と、再び流行を始めた感染症ずあり、それらとの戦いがコンスタントに存在します」

彼らがエイズと対峙した 1984年から三十数年後の今、フォーチ氏がアメリカ議会に示した地図は以下のようになった。

global-examples-2015.gif

ここまでです。

なんというか、これはもう・・・理屈の問題ではなさそうで、今の地球は何らかの大きな病気のサイクルに突入していると考えて間違いないと思われます。

この尋常とは言えない感じもある増え方は、もはや現代医学での公衆衛生的な観念の側面からだけでは説明がつかないかもしれません。

たとえば、上の地図で「最も多くマークがついている(新たな感染症が出現している)国のひとつが、アメリカ合衆国」(後述しますが、起源ではないとは思います。最初に患者が確認された場所という意味です)であることも、公衆衛生の側面と新しい病気の出現がリンクしていないことを示しているように思います。

それほど公衆衛生に大きな問題が満ちあふれているとは考えにくいアメリカ合衆国が、この約 30年間で、世界で最も感染症が新しく出現している(確認されている)というのは、説明が難しそうですが、その一方で、具体的な意味はともかく、「なんとなく納得できなくもない」という面もないではないです。

ちなみに、感染症マップの英文字は小さくて、読みづらいと思いますので、ひとつひとつ調べてみますと、下のようになっていました。

この約30年間で新たに出現した感染症
サイクロスポーラ( Cyclosporiasis / 原虫による感染症)
ハンタウイルス肺症候群( Hantavirus pulmonary syndrome )
腸管出血性大腸菌O104 ( E.coli O104 H4 )
腸管出血性大腸菌O157 ( E.coli O157 H4 )
C型肝炎ウイルス( Hepatits C )
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病( vC JD )
ライム病( Lyme disease )
ラッサ熱( Lassa fever )
重症急性呼吸器症候群( SARS )
中東呼吸器症候群( MERS )
重症熱性血小板減少症候群ウイルス( SFTSV bunya virus )
変異型インフルエンザA型 H3N2v
インフルエンザA 2009 H1N1
鳥インフルエンザA H7N9
鳥インフルエンザA H5N1亜型
ニパウイルス感染症( Nipah virus )
ヘンドラウイルス( Hendra virus )
エンテロウイルス( Entero virus 71 )


かつて流行していた再び流行が発生した感染症
ペスト
コレラ
エボラ出血熱
マールブルグ出血熱
黄熱病
サル痘( Human monkeypox )
デング熱
リフトバレー熱
耐性菌マラリア
など


というような感じになっていますが、見た限り、赤マークのほうの「この 30年間で新たに出現した感染症」のほうに関しては、「特化した治療法が存在しない」ものだと思います。

つまり、インフルエンザも SARS や MERS も O157 や、ライム病などにしても、 症状をおさめる対症療法しかないはずです。

そして、具体的な予防法もないです。

「再流行」のほうは、エボラ熱や、症状がエボラと似たマールブルグ熱なども対症療法しかないですが、一方で、ペストやコレラなどには抗生物質がよく効くため、現在では死亡率は低いです。

・・・ですが、逆にいうと、これらの病気は「抗生物質が最後の砦」ともいえます。

耐性菌がもたらすかもしれない「何らかの未来」

ついに、すべての抗生物質に打ち勝つスーパーバクテリアが登場したことなどを思い出します。

2015年12月7日の報道より
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抗生物質に対しての耐性菌が次々と出現している中でも、コリスチンという抗生物質だけは、今まで「大丈夫」だったのですが、それにも耐性を持つ、「不死身の遺伝子」と科学者たちが呼ぶ MCR-1 という遺伝子を含むバクテリアがデンマークで見つかったのでした。

この遺伝子を含むバクテリアは、それより前の昨年 11月に中国で見つかっていたのですが、デンマークで見つかったことにより、全世界的に広がっている可能性が示唆されています。

こういうものが蔓延しだすと、まさに「すべての抗生物質が効かない」という世界が出現するのかもしれないのですね。

そういうところから考えてみましても、ペストやコレラといったような「抗生物質が最後の砦」の病気の再流行にしても、もはや「抗生物質がよく効くから大丈夫」という話ではなくなる可能性もあります。ちなみに、ペストはアメリカやマダガスカルなどで結構な数で患者が出ていて、おそらくですが、治療には大量の抗生物質が使われると思いますので、抗生物質に耐性を持つペストやコレラが出現するのも、そう先の話ではないのかもしれません。最近のペストの流行については、下の記事などをご参照下されば幸いです。

マダガスカルでペストの流行により63名が死亡2016年01月09日
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アメリカで今年、ペストに感染する人が異常に増加中2015年08月26日
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ちなみに、この「耐性菌」と関連した話ですと、少し古い話ですので、現在は数値が変わっていると思いますが、2010年に WHO は、

「中国での結核菌保菌者の数は 5億5千万人」

として、また、当時の記事には、以下のように記されていました。

中国では 2009年に肺結核が原因で死亡したと報告された人が 3783人、感染者の報告は 107万6938人だった。抗生物質が効かない耐性菌も多く、中国日報によると、流行が爆発すれば、恐るべき事態になるという。

中国工程院院士で、呼吸器感染症の権威とされる鐘南山氏によると、体内で結核菌の活動が活性化している人は中国全国で 450万人、保菌者は 5.5億人との結論が出された。人口の約半数が結核菌を持っており、一生のうちに発病する確率は 10%と考えられる。

一般的な治療法は、抗生物質 4種を同時に使うことで、連続して 6-8カ月使いつづければ、結核菌を完全に消滅させることができる。しかし最近では、抗生物質に耐性を持つ結核菌が増えている。


これからの病気に関しては、「未知の領域」というものも含めまして、いろいろな懸念の種のようなものはすでにありますが、しかし、何はともあれ、先ほどの地図でわかることと、医学的な事実として、

・この30年で新しい感染症が異常に増えている

・抗生物質が効かない細菌が増えている

・ウイルスについては治療薬はほとんどない

という現実があります。

現在流行しているジカウイルスは、場合によっては、「人類の健全な生殖と再生産の阻止」につながっていくものでもあり、北半球は今のところはまだ多くが冬ですので、今は心配はないでしょうが、しかし、北半球の多くの地域に、春が来て、そして夏が来て、蚊の活動が活発になる頃にジカウイルスが収まっているのかどうかは誰にもわからないです。

その中で、リオのカーニバルは大盛況で終わりまして、そのリオでのオリンピックがあったりもしていて、病気が広がる下地は十分にできあがっています。

こういう様々を見ますと、何となくですが、この 30年間の「病気の増大」のクライマックスが近づいているような気配も感じないではないです。

という記事で、この地球の過去 30年は、それまでの歴史になかったような「新しい病気の出現の時代」であることを、アメリカ国立衛生研究所の資料をもとに記したことがありました。

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今回取り上げる病気も、医療機関は完全にお手上げとなっていて、治療法もわかっていません。

最近、そういうアメリカの「手足の麻痺を伴う病気の流行」についての記事を目にしたのですけれど、最初に読んだのはワシントンポストの記事で、その冒頭にある男の子の「症状の出現」の描写にややショックを受けまして、そのワシントンポストの記事の冒頭部分を抜粋翻訳します。

9月21日のワシントンポストの記事より
A mysterious polio-like illness that paralyzes people may be surging this year

7月29日の夕食前、バージニア州の3歳の男の子カーター・ロバーツは、その健康にはまったく問題ないように見えた。

その夜、彼は嘔吐した。

翌日、彼が目覚めた時に 37.2℃の微熱があり、母親のロビン・ロバーツは、子どもは風邪を引いたのだと思った。

その翌朝、彼女は、子どもが寝室の床に倒れているのを発見した。

カーターは、「ママ、ぼくを助けて、ぼくを助けて」と言う。

母親が彼を抱き上げた時、彼はかろうじて立つことができる状態で、その首は後ろに反ったままだった。

最も母親が心配に思ったことは、カーターは、右腕を自分で動かすことができなくなっていることだった。

病院に運ばれたカーターは、右腕を使えなくなった数日以内に、足や他の筋肉のコントロールを失った。

今、彼は、つま先を小刻みに動かすことと、顔を左側に動かすこと以外はできない。

彼は病院で急性弛緩性脊髄炎と呼ばれるポリオと似た謎の疾患と診断された。

同じような症例が現在のアメリカで急増している。


子どもに微熱が出て、軽い風邪だと思っていたら、翌日に「体が麻痺して動けなくなっている」ということのようで、どうもこう、何とも言えない怖さというのか、そういうものがあります。

現在のアメリカで、この病気にかかる子どもが増えていて、それは下の表のように、現在かなりの上昇を描いているのです。

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3歳あたりの子どもにとって、微熱、あるいは高熱は珍しいことではないわけで、子どもという存在自体が、空気中のさまざまな細菌やウイルスに対しての免疫をつけていく時期ですのが、風邪などを含めて、多くの病気にかかり熱を出していくことは必要なことだとも言えます。

しかし、こんな深刻な後遺症を伴うものだと、その考え方でいいというわけにもいかない感じもします。

何よりも、最も大きな問題は、治療法がわかっていないだけでなく、「何が原因となっているかもわかっていない」ということです。

原因がわからないということは、予防法がないわけで、どんな症状に気をつけるということもわからない。微熱が症状だとしても、微熱だけですべての子どもが病院に殺到しては、医療機関がパンクします。

何もわかっていないのです。

なので、さきほどのワシントンポストの記事にあるように、病院に運ばれたからといって、症状が改善するわけでもない。

ただ病院にいるという以外のなにものでもない。

あと、わりとショッキングな事実として、今回ご紹介する冒頭の UPI の記事によれば、2014年から始まっているこの疾病の流行の中で、 2014年に診断された子どもの場合、

「 120人のうち、完全に回復したのは 3人だけ」

というデータが示されています。他の大多数は、程度の差はあるだろうにしても、何らかの麻痺を残してしまっているという可能性が高いのです。

2014年の時点で 100人以上がこの麻痺を伴う謎の疾患にかかったことが報じられていましたが、今年は、さらに増えていく可能性もある上昇率となっています。

2015年1月28日のUSAトゥディより
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そして、アメリカでは、今年になって、何度も「謎の病気」や、あるいは、小学生のハンセン病など、症状的に深刻な可能性のあるものの報道が多くなっています。

2016年9月23日のインターナショナル・ビジネスタイムズより
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2016年9月15日の米国報道より
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最近は、妊娠した女性に関してのジカ熱などもそうですが、その影響が「不可逆」的な病気が多いような気がします。

元の状態には戻らないというか、その影響が一生に及ぶというような意味です。

今、アメリカで流行の兆しを見せている今回取り上げましたポリオのような病気もそのようなものであるようにも見えます。

いったい、この世界は子どもたちをどうしたいというのでしょうかね。

冒頭の米国 UPI の記事をご紹介します。

Cases of rare polio-like illness up sharply in 2016
UPI 2016/09/21

ポリオと似た珍しい疾患が2016年に急増している

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の職員たちは、急性弛緩性脊髄炎 / AFM の症例が突然の増加を示しているように見えることに懸念をあらわしている。

急性弛緩性脊髄炎の症例の急激な上昇は、最初は 2014年にアメリカの子どもたちのあいだにポリオのような症状の疾患が数多く見られたことに始まる。

これらの疾患に大流行の可能性があることに対して、医師たちは、この疾患に対しての理解がほとんどないことに懸念を抱く。

疾病予防管理センターによれば、これまでのところ、アメリカ全国から 32の新たな AMF (急性弛緩性脊髄炎)の症例が報告されているという。2014年には 5ヵ月間に 34の州から 120人の子どもたちが AMF と診断された。

それらの症例では AFMは、神経的症状が示される前に、発熱や呼吸器疾患として始まるように見え、そして、次第に手足の動きの麻痺につながっていく。

ほぼすべての患者が脊髄灰白質の炎症を示し、85%の子どもたちの症状は少し改善を示したように見える。 2014年に診断された子どもたち 120人のうちでは 3人が完全に回復した。

疾病予防管理センターは、2014年のデータと照らして、今年 1月以来のAFM の症例の上昇の原因を特定しようとしている。

アメリカ国立神経疾患・脳卒中研究所 (NINDS)のアヴィンドラ・ナス博士(Dr. Avindra Nath)は、ワシントンポスト紙に以下のように語る。

「このような私たちの考えを人騒がせだと怪訝に思う方々もいらっしゃるかもしれませんが、しかし、私たち医学者たちが懸念する理由は存在するのです。私たちは、これらの症例に対するさらなる情報を必要としています」

疾病予防管理センターは、2014年8月から 10月に AFM の疾患の症例の増加を受け始めたという。

AFM の具体的な原因は発見されていないが、これらの症例はウイルスによって引き起こされる疾患と似ている。

2014年の AFM の流行は、エンテロウイルス D-68 の全国的な流行と同時に発生した。そして、研究において AFM と D-68 に関係があることがわかった。

しかし、このウイルスのことはよく知られておらず、また、 D-68 に感染したすべての子どもが AFM を経験するわけではない。

コロラド大学とデンバー小児病院の神経学者であるテリー・シュライナー博士(Dr. Teri Schreiner)は、「私たちは、明らかにアメリカの全国の同僚たちから症例を聞いているのです」と言う。

「 2014年に起きたものと同様の速度で広がっているように見えており、これは気になる傾向です」

と、博士は付け加えた。

この中に、2016年9月21日の米ワシントンポストの「子どもに麻痺をもたらすポリオのような不可解な疾患の症例が急激に増えている」という記事を抜粋したものを掲載していますが、以下は、その記事の冒頭の部分です。

徐々にではなく、以下のように「ある日突然、症状が始まる」のです。

私はこれを読んだ時に、正直かなりのコワさを感じました。

この 2016年の時点では、

・原因がわからない

・予防法も治療法もない


ということになっていましたが、2018年の今もそれは同じです。

対症療法以外の治療法は一切なく、対症療法といっても、完全に筋肉の機能を失ってしまっているので、短期間ではリハビリなどに至るのは難しいですし、できる対症療法というのは、肺の機能を補助するための人工呼吸器などの措置のようです。

薬物などの治療も基本的に今のところ大きな効果はないと思われます。後でご紹介しますが、この疾患について、日本の厚生労働省が今年発行した文書に以下のようにあります。

厚生労働省「急性弛緩性麻痺の手引き」より

・急性弛緩性脊髄炎(AFM)に対して、今のところ著効する治療はなく、対症療法、支持療法 を中心に行う。


このように書いてあるのですが、その下にはアメリカでの治療例として以下のように書かれています。

急性弛緩性脊髄炎の治療として、静注免疫グロブリン投与、血漿交換、静注ステロイド、抗ウイルス薬の投与が行われる。

日本の報告では、免疫性中枢性・末梢性神経疾患で用いられるメチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法と経静脈的免疫グロブリン大量療法がそれぞれ7~8割の症例で行われていた


というように、それぞれがどんな治療効果があるのかはわからないですが、静注免疫グロブリン投与、血漿交換、静注ステロイド、抗ウイルス薬の投与、というようなことなどが行われるようです。

ここで先ほどの 2016年(最初のアメリカでのこの疾患の集団発生から 2年後)の報道の下のくだりを思い起こしてほしいのです。

> 120人のうち 3人が完全に回復した。

このあたりから見ますと、今のところ、劇的な治療の効果は出ていないと解釈しても構わないと思われます。

もちろん、「ある程度改善した」という例などを含めて、少しよくなった子どもたちは数多くいるでしょうけれど、ただ、厚生労働省の資料には、6ヶ月後の状態として、

運動麻痺は改善するものの、最終的に75~90%の患者で様々な程度の筋力低下が残存する。

と記されています。

現在も原因も治療法もわかっていない中で、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、以下のような印刷物を配布し、子どもに症状が現れた場合は、すみやかに医療機関に相談することを勧めています。

CDCが配布しているAFMの症状

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ここに書かれている症状は、おおむね、以下のようになります。

急性弛緩性麻痺の代表的な症状(これらが突然起きる)

・眼球を動かすのが難しくなる

・まぶたが落ちてくる

・顔の皮膚や筋肉が垂れてくる

・唾を飲み込むのが難しくなる

・突然、腕や脚の筋肉が弱くなる


これについては、先ほどの過去記事にあります 3歳の男の子の例も同じような感じです。

日本でも実は100人以上の症例が報告されていた

実は、今回このアメリカでのことを取りあげたのは、「これがアメリカだけの病気ではない」状況となっているためです。

簡単にいえば、

「日本の医療界でもやや緊張体制がとられている」

ようなのです。

たとえば今年 5月には、日本小児科学会はこの病気を「全数届出」としました。

全数届出というのは、その疾患を診察した医師は、その数すべてを管轄の保健所に届け出なければならないというものです。

以下の報道にそのことが書かれてあります。

15歳未満の急性弛緩性麻痺が全数届出に
m3.com 2018/05/24

日本小児科学会はこのほど、15歳未満の「急性弛緩性麻痺(AFP)」が2018年5月1日から全数届出疾患になったことを公式サイトで周知した。

2015年秋の急性弛緩性脊髄炎(AFM)の大流行後、同様の流行が発生した場合に備え、同学会予防接種・感染症対策委員会がAFPサーベイランスの準備を進めていたという。

今回、5類感染症となったことで、管轄の保健所に7日以内に届け出ることが義務付けされた。


症例が発生する可能性がないものを全数届出に指定するということもないでしょうし、ある程度の予測のようなものはあるのかもしれません。

先ほど引用させていただきましたが、今年 4月には、厚生労働省がこの急性弛緩性麻痺に対しての「手引き」を発行しています。

2018年4月に発行された急性弛緩性麻痺の手引き書の表紙

kousei-afp-manual02.jpg
・厚生労働省 / 国立感染症研究所https:●//www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/AFP/AFP-guide.pdf

この書類を読むまで知らなかったのですが、実は、日本でもかなりの症例が報告されているようなのです。

この厚生労働省の書類の「はじめに」には以下のようにあります。

2014年に北米で急性弛緩性脊髄炎 (AFM)症例が多発したのに引き続き、翌 2015年秋、日本でも急性弛緩性麻痺(AFP)症状を認める症例が多発しました。

当時、日本では AFP サーベイランスが実施されていませんでしたので、 集団発生の全体像を速やかに把握し、迅速な対策に繋げるために、感染症法に基づく積極的 疫学調査の一環で全国調査が実施されました。

その結果、2015年 8~12 月に成人を含めて全国から 100 例を超える AFP 症例が報告されました。


つまり、2015年にこの病気は「日本で集団発生」しており、そこから考えると、また日本でもいつ多くの発症例が報告されるかわからないのです。

なお、ここでは、急性弛緩性麻痺というように一括りにしていますが、日本の現在の定義では、原因がどんなものであっても、四肢などの麻痺を伴うものをこのように呼んでいまして、以下のようにいろいろと原因はあります。

・ポリオ
・エンテロウイルス(A71、D86)感染症
・ギラン・バレー症候群
・重症筋無力症
・外傷性神経炎


他にもいろいろとありますが、現在、アメリカで広がっているものについては、ポリオではなく、エンテロウイルスが検出されることが多いとはいえ、それとの因果関係もわかっておらず、

「突然この世に出現した、子どもをターゲットにした不可解な疾患」

という言い方が最も適合すると思われます。

そして、思うのは、

「なぜ、今の世の中は、病の波が子どもばかりに寄せるのだろう」

ということでした。

もしかすると、過去に取りあげたさまざまなことが複合的な要因になっているのかもしれないとも考えたり

子どもの疾患は、日本を含めた主要国の場合、アレルギーやメンタル的なものなどを含めて、とても増えています。

アレルギーにしても、原因は「基本的に不明」というようになっていますが、しかし、たとえば、花粉症でも食べ物アレルギーでもアトピー性皮膚炎でも、

「昔はなかった。あるいは極めて少なかった」

ものではあり、今でも、たとえば、主要国以外の自然の中に暮らしているような人たちには、そのような疾患は少ないです。

主要国でも、たとえばアメリカで文明と離れて暮らしているアーミッシュの人たちには花粉症も含めたアレルギーが極めて少ないですので、ある程度の原因は「現代の生活様式にある」とは言えるはずです。

このあたりは、2015年4月の NHK スペシャル「新アレルギー治療」という番組で、アーミッシュにアレルギーが少ない理由を説明しています。

下は、そのことを説明していたサイトからの抜粋です。

北米で農耕や牧畜によって自給自足の生活を営むアーミッシュには、アレルギーが極端に少ないのですが、その理由はTレグが体内に多いためと考えられています。

Tレグは、免疫による攻撃(=アレルギー)を抑え込む役割を持っており、アーミッシュは幼少期から家畜と触れ合い、細菌を吸い込んでおり、その結果、Tレグを多く持つようになったと言われています。

逆に、現代の日本のように衛生的で細菌が少ない環境だからこそ、Tレグが増えずにアレルギーが増加したとも言えます……。

(アレルギー根本治療の“鍵”を握る「Tレグ細胞」とは?)


最近の研究で「制御性 T 細胞」(Tレグ細胞)というものが、免疫の鍵であることがわかってきていて、これがアーミッシュには「多い」のです。

なぜ多いのかという理由は単純で、アーミッシュは「過度に清潔にしていない」からです。

雑菌やさまざまな微生物や昆虫類などと共に生きるという「まともな生活」をしているからです。

そして、私たち日本人やアメリカ人は「無意味に過度な清潔の中に生きている」から「弱い」という、このような、とてもわかりやすい理屈が、医学的研究のひとつでは、すでに成立しているのです。

最終更新:2018/10/22 22:38

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