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2011-10-29 13:29

チンクェチェント物語り/リタ〜ンズ 10  (チンクェチェント物語り)

チンクェチェント物語り/リタ〜ンズ
〜guaio speciale編〜
(トラブル スペシャル編)

少なからずあったトラブル。
幾度となく立ち向かった記憶。
そう、心に刻み込まれたそれは、思い出として鮮明に甦るのである・・・(笑)。

というワケで、本人はモ〜レツに必死なので、忘れようにも忘れるはずも無く、
時にそれは、その場の空気、匂いまでも残る程、鮮明な記憶として頭の中に残っているのであります。
そしてそれをこのような形で、恥を忍んで(?)ネタにしている次第であります。


チンクチェント物語り/リターンズ10

『恐怖の元旦ブレーキ〜走馬灯の真実〜Part2』
"TAXI vs 力こぶ"


大通りを右折し、片側一車線の道に入った。
前に見えて来た、東西線の行徳駅前を通過すれば、あとはもう3~4分である。
そんなチンクの前を、オレンジ色のタクシーがお客を乗せて走っているのだが、
そのタクシー、なんとも運転がめちゃくちゃなのだ。
のろのろしたり、いきなり加速したり、ブレーキングが急だったりする。
かといって、場所を探している様子でもない。
「もう、乱暴な運転手だなぁ。」
こちらはどうやらブレーキが怪しげである。
その上、前を行くタクシーの行動が全く読めないので、更に車間距離を広めにとった。
そいつの不審な挙動は続く。
前方に見える信号が青になったにも関わらず、タクシーはエンジンブレーキで減速。
次の瞬間急加速し、交差点へと向かって行ったが、信号が黄色に変わり、今度は急ブレーキをかけている。
後部座席のお客の頭が、反動で前後に揺れているのがわかる。
「うわ、あんなのに乗ったら最悪だな・・・。」
おかげで、こっちは変なタイミングでブレーキングとなった。
右足に力を込める。

チンクェチェント物語り/リタ〜ンズ
が・・・、
『ンムム〜〜〜』
「えっ!?」
『ギュムム〜』とならないのだ!!
「え?ええ!?」
何かヌルヌルした物を踏んでいるかのような、異様な、そしてとてもイヤな感触が右足を伝い上ってくる。
『ンムム〜〜〜』
しかも、
「ブッ、ブレーキが!!!効かない!?」
全く効いていないわけではないが、制動力が明らかに足りないのだ!!
「なんだー!さっきは止まれたじゃないかあぁー!」
両腕をハンドルに突っ張り、右足は硬直状態で力一杯ブレーキペダルを踏み込む。
『ン〜〜ムムム〜〜〜〜』
だが、いつもは踏み込めるはずもない奥の方までペダルが行ってしまい、それ以上踏み込めない。
そして、やはりヌルヌル感しか伝わって来ないのだ!
「うおおーー!マスターシリンダーを踏み抜いたのかーー!?」
チンクのブレーキは、ブレーキペダルで直にマスターシリンダーを押す仕組みになっているのだ。
コストダウンのために採用された、無駄を省いたシンプルで簡潔な作りである。
シンプルが故に故障の危険は少ないのであるが、どうやらそいつが壊れたらしいのだ!
「ヤバい! とっ、止まれねぇ!!」
まるで『天から隕石が降ってきて人類滅亡!』かのような勢いで、
一直線にタクシーに向かって突進して行くチンク。
このままではタクシーに激突して、チンクもろとも木っ端みじんになって滅亡してしまうのだ!
チンクは”恐怖の大王”だったのだ!
ノストラダムスなのだ!
アルマゲドンなのだ!
「バカヤロー! し、新年早々逝ってたまるかぁー!!」

チンクェチェント物語り/リタ〜ンズ
一気に血の気が引いて行く。
「くっ!」
すかさず、強引に2ndギアにシフトダウンする。
『ブ・・リイイー!!』
と、2気筒エンジンの強力なエンジンブレーキがかかる。
だが、例のタクシーは完全に停車していて、チンクはどんどんそいつに迫って行く!
「うおおおーー!!!」
30m・・・25mと、距離が縮まって行く。
視界に入るメーターのスピードは徐々に落ちて、時速15km程になっているが、
タクシーにぶつからずに止まれる気がしないのだ!
「ダ、ダメだ!まだ制動力が足りねぇ!」
もはや、まわりは視野に入らなくなる。
そして、
『ド・・クン・・・ド・・クン』
と、鼓動が耳に響き、急にそれ以外の音は聞こえなくなる。
まるで、スローモーションのように時間の流れが遅くなる。
”カッ”と、見開いた目が、まばたきをしていないことが自分でもわかる。
その視線は、徐々に降りてくるスピードメーターと、縮まり行くタクシーとの距離を交互に追っている。
確実に近づいてくるタクシーの、赤いブレーキランプがかすかに上下に揺れている。
その色が、忘れていた記憶を次々と呼び覚ます・・・。
「そう言えば昔、子供の頃、田舎の山の下り坂で自転車のブレーキワイヤーが切れて、
雑木林に思いっきり突っ込んだことがあったっけ・・・。あの時は血みどろになったよなぁ・・・。」
と、その時の景色が現実と重なる・・・。
「時速10km。あと、10mか・・・。」
「あれはなんだったっけ?赤い風船が風に揺れていたのは・・・。」
「あぁ、そうだ、幼稚園の頃行った遊園地だ・・・束になった赤い風船・・・それが・・・。」
(奥の方に仕舞い込まれ、忘れ去られた遠い記憶が、脈絡もなくグルグルと廻る。
走馬灯のように甦る記憶というのは、きっとこういうものなのであろう。
スローモーションは何度か経験したことがあったが、これは始めての体験であった。)
「・・・赤い?・・・」
「はっ!ブレーキ!!」
まだ記憶の縁に留まり、何か思い出しそうであったのだが、急に我に返る。
合わせて、時間の流れも一気に戻る。
「うおぉりゃーー!!」
右腕に力を込めると、ブレーキシューとドラムが擦れているのを感じ取れる。
『グググ〜〜〜』
とブレーキが効き始める。
気が付けば、とっさにサイドブレーキを思いっきり引き上げていたのだ。

チンクェチェント物語り/リタ〜ンズ
チンクのサイドブレーキは、ちゃんと別系統のワイヤーが備わっており、直接リアブレーキに働くのである。
脚力のブレーキペダルとは違って、今度は腕力ブレーキなのである!
腕力勝負なのだ!
力こぶなのだ!!
「いける!」
「でやぁー!」
『グッググググ〜』
・・・・・・・・・・・・
そして、静寂が訪れた。
「ぶはぁー!」
止めていた息を一気に掃き出し、右腕の力を抜く。
「ふっ、ふふふ・・・。」
「止まった・・・止まったぞ!!」
タクシーまで、あと50cm程を残してチンクはピタリと止まったのである。
”恐怖の大王”は去ったのだ!
「よ〜し!このやろう!やった・・・ぜぇ・・・え?・・・」
『ブガオーー!』
こっちが止まった瞬間、信号が青になったらしく、タクシーは猛ダッシュで走り去って行ってしまった。
「・・・なんだったんだよ。あいつは・・・。」
一瞬、呆然とするも、その場で停車しているわけにもいかない。
「後続車はいないけど、さて、どうするかな。」
今青になった信号を超えて200m程行けば、目的地のホームセンターである。
周囲に他の車もいないので、サイドブレーキを使って停車するまでの距離感を掴むため、
取りあえずその場で試してみることにした。
走り出し、時速30kmからシフトダウン、ブレーキランプを点灯させるためにもブレーキを踏む。
ブレーキが全く効かないわけではないのだが、やはりかなり効きが悪い。
サイドブレーキを、『グググ〜』と引き停車する。
制動距離は、通常より5〜6m程度長い感じだ。
「ふむ、止まることはできるな・・・。サイドブレーキを強く引けば、もっと短い距離で止まれるか。」
ということで、目的の買い物をし、ゆっくり走って帰宅したのであった。
で、正月早々、Sさんに無理を言って持ち込んだ結果、
マスターシリンダーはOリングの交換だけでは済まないようで、オーバーホールをしないと治らないとのこと。
結局、在庫であった新品のマスターシリンダーに交換したのであった。

この恐ろしい事件で学んだこと・・・。
走れないのはとても困るが、単に走れないので危ないわけではない。
しかし、止まれないのは命にかかわる(自分だけでは済まないことも考えられる!)ので、大変危険なのである。
皆さん、ブレーキだけは気を付けましょうね!!

おわり

チンクチェント物語り/リターンズ11予告

次回
『チンクェチェント物語り/リタ〜ンズ』
第5章
〜番外編〜
『工具は大事!』


お気に入りの工具はありますか?
そこには奥の深い、危険な(?)世界への入口が待っているのである。


毎週掲載してきましたが、次回の掲載次期は未定です、少しお休みします。
MEXさんには、忙しい中恐怖の記憶を思い起こしながら書き下ろししていただいております。
 待遠しいとは思いますがご了承くださいませ (^^)



チンクェチェント物語り/リタ〜ンズ
なんと、読んで楽しんで下さる方がいらっしゃるようですので、図々しくも調子に乗って『リタ〜ンズ』が始まってしまいました。
真面目な話しも書こうかと、ちょっと固めにスタートしました。
「え”〜!壊れ話しじゃないの〜?」という不届きな方々の為には・・・。
ご安心(?)下さい。
そもそも、MEXが何処まで真面目な文章に耐えられるのか?甚だ疑問であります。
しかも前回の『チンクェチェント物語』を書いてからすでに10年以上。
当然、その後何事もなかった訳ではございませぬ。
しかし書き貯めた文章が有るわけでもなく・・・なので、たま〜に書き綴ろうかと思っています。
予定は未定です。順番も定かではございません。
イタリアンジョブです(笑)。
どうか、ごゆるりとお待ち下さい。

MEX

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